2022年10月27日付で、米・ワシントンポスト紙(オンライン版)に、衛星によるビフォー・アフター画像を利用してウクライナの文化財の被害状況の追跡を進める国際連合(UN)の取組に関する記事が掲載されました。
記事によると、ユネスコとUN衛星センターは、民間企業によって撮影されたビフォー・アフターの衛星画像を使用して、重要な文化施設への被害の確認報告を系統的に記録しているとあります。当局による責任者の起訴や、ウクライナの復興の優先順位付けを支援する計画であり、専門家の作業を容易にするために専用のプラットフォームの作成も予定されています。
ウクライナの当局者から文化施設への損害の可能性があるとの報告を受けると、UN当局者はその報告を検証し、必要に応じて衛星画像を使用してそれらを照合し、最終的なデータベースに登録されることになっているとあります。衛星画像は、陸路ではアクセスできない紛争の激しい地域の文化財への被害を確認する際に特に有用であると述べられています。
記事掲載時点では、ロシアによるウクライナへの侵攻開始以降、88の宗教施設、10の図書館を含む207の文化施設の破壊または損壊が報告されています。なお、ウクライナにある7か所の世界遺産の被害はこれまでのところ確認されていないとしています。
U.N. uses before-and-after photos to track Ukraine’s cultural destruction(The Washington Post, 2022/10/27)
https://www.washingtonpost.com/world/2022/10/27/ukraine-un-satellite-cultural-destruction/
Damaged cultural sites in Ukraine verified by UNESCO(UNESCO)
https://www.unesco.org/en/articles/damaged-cultural-sites-ukraine-verified-unesco#chernihiv-region
参考:
ロシアによるミサイル攻撃によって被害を受けたウクライナ・キーウの文化施設(記事紹介)
Posted 2022年10月14日
https://current.ndl.go.jp/node/46991
ユネスコ、ウクライナで150を超える文化財が一部または全部破壊されたと発表
Posted 2022年6月30日
https://current.ndl.go.jp/node/46416
ウクライナの文化遺産保護のための動き(記事紹介)
Posted 2022年3月10日
https://current.ndl.go.jp/node/45759
ウクライナの文化遺産関係機関のオンライン上のデータを保存するプロジェクトが実施中
Posted 2022年3月8日
https://current.ndl.go.jp/node/45738
ロシアによるウクライナへの侵攻に対する、国立図書館・文書館・博物館および関係機関等の声明
Posted 2022年3月1日
https://current.ndl.go.jp/node/45704
E2483 – ロシアによるウクライナ侵攻に関連する図書館・博物館の状況
カレントアウェアネス-E No.433 2022.04.21
https://current.ndl.go.jp/e2483