ハゲタカ出版社の最新の手口:海賊版・リブランディング(記事紹介)

2021年10月26日付で、Springer Nature社が刊行する学術雑誌Natureに、カナダ・モントリオール大学のKyle Siler氏らによるコメント記事”Predatory publishers’ latest scam: bootlegged and rebranded papers”が掲載されています。

このコメント記事では、Web of ScienceやScopusといった選択的な論文データベースで索引付されていない出版社のデータベースLacunaを構築したことによって明らかになったハゲタカ出版社の手口について述べられています。

Lacunaは、主要な論文データベースから省略された出版物を表にすることを目的としており、10の出版社の2,300のジャーナルに掲載されている90万を超える論文のインデックスを提供しています。これにより、学術コミュニケーション全体の正当性を調査し、多様な出版場所、ならびに非合法、ニッチ、および新興のジャーナルを明らかにすることができる、と述べています。

記事では特に、いわゆるハゲタカジャーナルの出版等を手掛けるOMICS Group社による二つの慣行について報告しています。

一点目は、OMICSのブランドは多くのジャーナルから削除されていることです。2020年にOMICSは、OMICSへの参照を削除するために、何百ものURLを変更し、Webサイト等を見直しました。例えば、Journal of Surgeryは、同一のDOIのプレフィクス、ISSN、編集長により新ブランドで継続していることが指摘されています。

二点目として、海賊版の論文を再発行していることが明らかになりました。元のジャーナル、場合によっては元の著者をクレジットせずに、新しいDOIの下で、正当なソースからの論文の海賊版の発行を行っています。

最後にハゲタカ出版社を撲滅させるための推奨事項として、査読を監視すること、質を助成にリンクさせること、誠実な新興ジャーナルの支援、ハゲタカジャーナルの論文にリワードを与えないことが挙げられています。

Siler, K. et al. Predatory publishers’ latest scam: bootlegged and rebranded papers. Nature. 2021. https://doi.org/10.1038/d41586-021-02906-8

参考:
CA1960 – ハゲタカジャーナル問題 : 大学図書館員の視点から
Posted 2019年9月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1960

ハゲタカ出版社に5,010万ドルの支払い命令 米ネバダ州連邦地裁が判決
Posted 2019年4月9日
https://current.ndl.go.jp/node/37982

「ハゲタカ出版」のリストとブログの内容が削除される
Posted 2017年1月20日
http://current.ndl.go.jp/node/33292