英国のロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(London School of Economics and Political Science : LSE)のブログ“LSE Blogs”に、2021年6月22日付けで記事“Review papers and the creative destruction of the research literature”が掲載されています。筆者はカナダ・マギル大学で社会学の助教授(Assistant Professor)を務めるPeter McMahan氏です。
記事では、McMahan氏らが2021年3月に発表した論文“Creative Destruction: The Structural Consequences of Scientific Curation”に基づき、レビュー論文での紹介が被引用数にもたらす影響や、レビュー論文がその対象とする研究領域の確立に果たす役割について紹介しています。
レビュー論文で引用された論文のうち、その多くは(当該論文の代わりにレビュー論文が引用されることにより)被引用数が減少する傾向にある一方で、少数の論文では被引用数が大幅に増加するとしています。この増加の原因は、次のように分析されています。
・レビュー論文は新興の科学領域について書かれることが多く、その領域は、互いに緩やかにしか繋がっていないいくつかの研究クラスター(research clusters)からなる傾向がある。
・これらのクラスター間の繋がりは異種の研究努力を結びつける一握りの「橋渡し」論文によって形成される。
・レビュー論文がこれらの「橋渡し」論文に焦点を当ててキュレーションを行うことで、これらの論文は当該領域での標準的な被引用論文(canonical citations)になり、レビュー論文が発表されなかった場合と比較して注目度が大きく高まる。
記事では、レビュー論文が研究領域を結びつけ、あるいは中核となる概念を示すことによって研究領域全体を形作る役割を果たしていることに注目しています。記事のタイトルでは、その役割を「創造的破壊」(creative destruction)と形容しています。
Review papers and the creative destruction of the research literature(LSE Blogs, 2021/6/22)
https://blogs.lse.ac.uk/impactofsocialsciences/2021/06/22/review-papers-and-the-creative-destruction-of-the-research-literature/
関連:
McMahan, Peter.; McFarland, Daniel A. Creative Destruction: The Structural Consequences of Scientific Curation. American Sociological Review. 2021, Vol 86, Issue 2, p. 341-376.
https://doi.org/10.1177/0003122421996323