Nature誌のオンライン版に、2021年3月23日付けで記事“The fight against fake-paper factories that churn out sham science”が掲載されています。偽の科学論文を注文に応じて製造する「論文工場」(paper mill)と、学術界・出版社等との戦いをめぐる近年の動向を紹介しています。
記事の冒頭では、英国王立化学会(RSC)の学術誌“RSC Advances”等に掲載された論文に「論文工場」による組織的な偽造の疑いが見つかり、2021年1月にRSCがこれら論文の撤回を表明したことを取り上げています。これらの論文が中国の病院に勤務する著者のものであったことや、中国の医師は論文発表が昇進要件に含まれることが多いものの、研究に割ける時間が限られていることに触れています。その上で、中国政府も論文偽造の問題への対処として研究評価の改善に取り組んでいること、「論文工場」の問題は中国に限らずイランやロシア等の他の国の論文にも存在すること等が紹介されています。
記事では、出版社が進めている対策についても触れています。図表の不正への対処としてその根拠となる研究データの提出を求める動きが見られることや、論文内の改変・コピーされた画像を特定するためのソフトウェア開発に取り組んでおり、そのソフトウェア標準を議論するために大手出版社が参加するワーキンググループが設立されていること、出版倫理委員会(COPE)もこの問題への対処を進めていること等を紹介しています。
The fight against fake-paper factories that churn out sham science(Nature, 2021/3/23)
https://doi.org/10.1038/d41586-021-00733-5
参考:
ロシアで展開される研究不正行為の実情:ハゲタカジャーナルへの掲載・共著者枠の売買・外国語論文のロシア語訳による剽窃など(記事紹介)
Posted 2021年2月9日
https://current.ndl.go.jp/node/43233