2021年2月11日、博物館・図書館・公文書館の職員や利用者への新型コロナウイルスへの影響を軽減するための資料の取扱方法について、科学的根拠に基づいた情報を作成・普及させることを目的とするREALM Projectが、新型コロナウイルスの除染手段としての自然減衰に関する第7回目・第8回目のテスト結果を公表しました。
第7回目・第8回目の調査は、低温(1度から4度)と温暖(28度から29度)な環境下での新型コロナウイルスの自然減衰の差をテストしたものです。テスト素材には、ハードカバーの表紙、ソフトカバーの表紙、プラスチック製の保護カバー、発泡ポリエチレンが用いられ、ウイルスを付着させ乾燥させた後、外光や空気のない環境制御された装置にいれて実験されました。
調査結果として、低温下での減衰率は温暖下でのものと比べて著しく遅く、検出可能なレベルのウイルスが10日後でも存在したと紹介されています。一方で、温暖な環境下では、プラスチック制の保護カバー以外の全ての素材で6日目までには検出されなくなりました。これは常温下よりもやや速いと説明されています。
この結果をうけ、同プロジェクトでは、資料の隔離を行っている機関では、資料を隔離空間に持ち込んだ後の隔離開始時間に影響を与えると指摘し、可能であれば、温暖な環境で保管することで隔離期間を短くできる可能性があるとしています。
REALM project releases results from tests of virus on materials at different temperatures(OCLC,2021/2/11)
https://www.oclc.org/en/news/releases/2021/20210211-realm-test-results-virus-different-temperatures.html
Test 7 and 8 Results (REALM Project)
https://www.oclc.org/realm/research.html#test7-8
参考:
REALM Project、新型コロナウイルスの除染手段としての自然減衰に関する第6回目のテスト結果を公表:建築材料を対象とした調査
Posted 2020年11月20日
https://current.ndl.go.jp/node/42576
REALM Project、同プロジェクトの各種資料の理解や使用を助けるツールキットを公開:第6回目のテストも実施中
Posted 2020年10月29日
https://current.ndl.go.jp/node/42394
REALM Project、新型コロナウイルスの除染手段としての自然減衰に関する第5回目のテスト結果と文献レビューを公表:皮革・合成皮革等を調査
Posted 2020年10月16日
https://current.ndl.go.jp/node/42292
REALM Project、新型コロナウイルスの除染手段としての自然減衰に関する第4回目のテスト結果を公表:積み重ねた状態では6日後にも検出
Posted 2020年9月4日
https://current.ndl.go.jp/node/41923
REALM Project、新型コロナウイルスの除染手段としての自然減衰に関する第3回目のテスト結果を公表:ABS樹脂・ポリカーボネート・軟質プラスチック・硬質プラスチック・アクリル素材を調査
Posted 2020年8月19日
https://current.ndl.go.jp/node/41777
REALM Project、新型コロナウイルスの除染手段としての自然減衰に関する第2回目のテスト結果を公表:点字用紙・光沢紙・雑誌の用紙・ボードブック・アーカイバルフォルダを対象に実施
Posted 2020年7月21日
https://current.ndl.go.jp/node/41554
REALM Project、新型コロナウイルスの除染手段としての自然減衰に関する第1回テストの結果を公表:図書館で一般的に見られる資料に用いられる5つの素材において3日後には未検出
Posted 2020年6月23日
https://current.ndl.go.jp/node/41295
REALM Project、新型コロナウイルスの除染手段としての自然減衰に関する研究文献のシステマティックレビューを公開
Posted 2020年6月18日
https://current.ndl.go.jp/node/41248