北米の研究図書館における男女の給与格差の経時的変化(文献紹介)

2020年5月に刊行された、米国の大学・研究図書館協会(ACRL)の“College and Research Libraries (C&RL)”のVol.81, no.4に、米・パデュー大学のハワード(Heather A. Howard)准教授を筆頭著者とする論文“The Gender Wage Gap in Research Libraries”が掲載されています。

米国における男女間の給与格差は過去数十年で縮小したとはいえ依然として健在であり、米国国勢調査局の近年の調査でも女性の給与は平均して男性の8割程度であることが報告されています。男女間の給与格差の傾向は、伝統的に女性が多くを占める研究図書館にもあてはまります。論文では、米国・カナダの研究図書館における男女間の給与格差はどの程度か、時間の経過により給与格差の問題の改善が見られたか、などについての調査結果を報告したものです。

調査には北米研究図書館協会(ARL)が発行する給与調査レポートが使用され、1976-1977年度から2018-2019年度までのデータに基づく分析が行われました。分析はレポートの内容に基づき、役職・権限に応じて、館長レベル・副館長レベル・分館長レベル・部門長レベル・その他の実務者レベルの5段階の階層別に行われています。

41年間の変化として、女性がより高い階層の役職に就く傾向にあるという進展が見られる一方、階層内での男女間の給与格差は5段階全ての階層で健在であることなどが報告されています。

Howard, Heather A. et al. The Gender Wage Gap in Research Libraries. College & Research Libraries, 81(4), 2020, p. 662-675.
https://doi.org/10.5860/crl.81.4.662

参考:
北米研究図書館協会(ARL)、加盟図書館員の給与調査レポートの2018-2019年度版を公開
Posted 2019年7月31日
https://current.ndl.go.jp/node/38695

英国図書館(BL)、職員の男女間賃金格差に関する年次レポート(2019年調査)を発表
Posted 2020年3月10日
https://current.ndl.go.jp/node/40453

CA1197 – アメリカ合衆国の図書館における男女の賃金格差 / 星野絵里子
カレントアウェアネス No.226 1998.06.20
http://current.ndl.go.jp/ca1197