米国の大学図書館が受入したスペイン語資料の出版国に関する分析(文献紹介)

2020年9月に刊行された、米国の大学・研究図書館協会(ACRL)の“College and Research Libraries (C&RL)”のVol.81, no.6に、米・コロラド大学図書館に所属しロマンス諸語を専門とするオリバ(Kathia Salomé Ibacache Oliva)准教授らによる共著論文“Forgotten Hispano-American Literature: Representation of Hispano-American Presses in Academic Libraries”が掲載されています。

著者らは2019年7月に、OCLCのWorldCatの所蔵データを利用して、2014年から2018年に出版されたスペイン語資料の米国の大学図書館88館の所蔵状況について、資料の出版国がスペイン及び南北米国大陸の19のスペイン語圏国家のいずれであるかという観点から調査を実施しました。同論文はこの調査・考察等を報告するものとして発表されています。

著者らは調査の結果として、米国の大学図書館のスペイン語資料コレクションの大半がスペインまたはメキシコで出版された資料によって構成されていることなどを指摘しています。そして調査結果を踏まえて、中南米の小規模出版社からの資料購入に実務上の課題があることを認めつつ、調査対象とした大学の大半がスペイン文化専攻の講座を開講していることなどを背景に、スペイン語資料コレクションにおける出版国の不均衡は好ましくなく、様々な国家の出版するスペイン語資料によってコレクションが豊かな文化資本を形成するように目指すべきであること等を述べています。

Oliva, Kathia Salomé Ibacache, et al. Forgotten Hispano-American Literature: Representation of Hispano-American Presses in Academic Libraries. College & Research Libraries, 81(6), 2020, p. 928-944.
https://doi.org/10.5860/crl.81.6.928

参考:
OCLC、図書館に対する非英語資料の需要に関する調査結果を公表
Posted 2008年10月16日
https://current.ndl.go.jp/node/9079

本の多様性の日、アルゼンチンやチリ等でイベント開催される
Posted 2010年9月22日
https://current.ndl.go.jp/node/16849

E2059 – アジア学研究者の研究支援ニーズと大学図書館の役割(米国)
カレントアウェアネス-E No.354 2018.09.13
https://current.ndl.go.jp/e2059