米・ニューヨーク州議会へ事業者に合理的な条件で電子書籍を図書館へ提供することを義務づけた法案が上程される

米・ニューヨーク州議会(The New York State Senate)に2020年1月28日付で、事業者に「合理的な条件(reasonable terms)」で電子書籍を図書館へ提供することを義務づけた法案として、“Senate Bill S7576”が上程されています。

同法案は、電子書籍が「合理的な条件」により州内の公共図書館で公平にアクセス可能となるように、ニューヨーク州の一般事業法(General Business Law)へ電子書籍のライセンスについて定めた349-G項を新設して修正することを求めたものです。同法案では「合理的な条件」の内容として、利用者の同時アクセス数の制限・利用者にアクセスを提供できる日数の制限・ライセンス外の利用を防止する技術的保護手段の採用の3点を挙げています。同時に、図書館が同じ日に購入する電子書籍のライセンス数に対する制限は「合理的な条件」に含まれないことが明記されています。

同法案の提出根拠(Justification)として、図書館の新刊電子書籍購入可能冊数に一定期間の制限をかけるなど、その民主的・教育的機能を損なうような差別的条件を設定する出版社が現れていることが指摘されています。事業者によるこのような図書館への差別的な条件設定は、図書館利用者であるニューヨーク州の住民のデジタルコンテンツへのアクセスを大幅に制限しているとして、同法案で電子書籍の提供に関する合理的な基準を制定することで、図書館を差別し図書館利用者に不利益となるような慣行を禁止しつつ広く認められ効果的な商慣行を保証する、としています。

ニューヨーク図書館協会(New York Library Association:NYLA)は、同法案が成立すれば電子書籍を民間市場に提供する事業者は州内の図書館に対して特別な条件設定を行うことができなくなり、州内の図書館及びその利用者が必要なコンテンツに公平にアクセス可能になる、等の理由から同法案へ強い支持を表明しています。

NY State Senate Bill S7576(The New York State Senate,2020/1/28)
https://www.nysenate.gov/legislation/bills/2019/S7576
https://legislation.nysenate.gov/pdf/bills/2019/S7576
※二つ目のリンクはPDF形式の同法案です。[PDF:5KB]

NYLA EBook Support Memo [PDF:104KB](NYLA)
https://www.nyla.org/userfiles/uploads/NYLA_EBook_Support_Memo.pdf

参考:
北米の都市図書館協議会(ULC)の電子書籍への公平なパブリック・アクセスの必要性に関する声明に対して北米の市・郡の公選役職者77人が署名
Posted 2019年11月28日
https://current.ndl.go.jp/node/39611

大手出版社Macmillan社、図書館向け電子書籍提供モデル変更を実施:米国図書館協会(ALA)は継続して反対キャンペーンを展開
Posted 2019年11月11日
https://current.ndl.go.jp/node/39480

米国図書館協会(ALA)、Macmillan社に電子書籍のエンバーゴの撤回を求める請願書を公開:電子書籍無料貸出サービスも開始予定
Posted 2019年9月13日
https://current.ndl.go.jp/node/39025

米国図書館協会(ALA)、大手出版社Macmillan社の新しい電子書籍貸出モデルへのエンバーゴ設定について非難する声明を発表
Posted 2019年7月29日
https://current.ndl.go.jp/node/38685