2021年12月29日、米・ニューヨーク州知事のKathy Hochul氏が、出版社に「合理的な条件」下で図書館への電子書籍ライセンス提供を求める法案に拒否権を行使しました。同法案は、2021年6月に州議会で可決され、12月17日に州知事に送付されていました。
米国の出版情報誌“Publishers Weekly”の2021年12月30日付の記事によると、同氏は、米国出版協会(AAP)が表明した懸念を踏まえ、米国著作権法は著者に著作物の共有範囲や条件についての独占的権利を与えていると指摘したうえで、米国著作権法の規定が優先されるため同法案を支持しない旨を述べたとあります。
同記事では、AAPが今回の決定に賛意を示したことが述べられています。また、米国図書館協会(ALA)は、2022年1月3日に、今回の決定を残念で遺憾であるとし、図書館が電子書籍へより合理的にアクセスできるよう、積極的な取組を続けること等を表明する声明を発表しています。
Assembly Bill A5837B(The New York State Senate)
https://nyassembly.gov/leg/?bn=A05837
※“Actions”の2021年12月29日欄に“Tabled”とあります。
Senate Bill S2890B(The New York State Senate)
https://www.nysenate.gov/legislation/bills/2021/s2890
※“Actions”の2021年12月29日欄に“Tabled”とあります。
Hochul Vetoes New York’s Library E-book Bill(Publishers Weekly, 2021/12/30)
https://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/digital/copyright/article/88205-hochul-vetoes-new-york-s-library-e-book-bill.html
ALA disappointed in New York Governor’s rejection of ebook equity legislation(ALA, 2022/1/3)
https://www.ala.org/news/press-releases/2022/01/ala-disappointed-new-york-governors-rejection-ebook-equity-legislation
参考:
米・ニューヨーク州議会で、出版社に「合理的な条件」下で図書館への電子書籍ライセンス提供を求める法案が可決
Posted 2021年6月17日
https://current.ndl.go.jp/node/44224
米国出版協会(AAP)、出版社に「合理的な条件」下で図書館への電子書籍ライセンス提供を求める法律に関して米・メリーランド州を提訴
Posted 2021年12月13日
https://current.ndl.go.jp/node/45321
E2422 – ライセンスは誰のために:電子書籍をめぐる米国州法の動向
カレントアウェアネス-E No.420 2021.09.16
https://current.ndl.go.jp/e2422
CA1978 – 動向レビュー:米国での電子書籍貸出をめぐる議論 / 井上靖代
カレントアウェアネス No.344 2020年6月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1978
CA1979 – 動向レビュー:欧州の図書館と電子書籍-従来の公共図書館よ、安らかに眠れ? / ベンジャミン・ワイト,井上靖代(翻訳)
カレントアウェアネス No.344 2020年6月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1979