改正EU著作権指令第14条により著作権保護期間の満了した資料のデジタル複製物をパブリックドメインのままとするには(記事紹介)

2020年1月21日付のEuropeana Proのブログ記事として、“Keeping digitised works in the public domain: how the copyright directive makes it a reality”が公開されています。

同記事は英国エクセター大学法学部のAndrea Wallace講師へのインタビューを通して、2019年4月に成立した改正EU著作権指令「デジタル単一市場における著作権指令(the Directive on Copyright in the Digital Single Market)」第14条の文化遺産分野における重要性と同講師の第14条に関する研究の解説を行ったものです。改正EU著作権指令第14条は、著作権の保護期間が満了しパブリックドメインとなったビジュアルアート作品の複製物について、創作性が存在しない限り著作権その他の権利は及ばないことを明記しています。

同記事では第14条制定の背景として、パブリックドメイン資料の複製物に「創作性」があるかどうかに関して法的に明文化が行われていかなかったことから、文化遺産機関がこうした複製物に著作権を主張し公衆のアクセスを排除することが可能になっていたという問題を指摘しています。Europeanaは数年来、パブリックドメイン、または創作者でも権利保持者でもない作品をデジタル化した複製物・代替物にクリエイティブ・コモンズ(Creative Commons:CC)ライセンスを付与することに反対しており、第14条に自身の認識が反映されていることに賛意を表明しています。

また、第14条の適用対象となる「ビジュアルアート作品」がどのようなものであるかは、同指令上では定義されておらず、各国が国内法化の際に明確化する必要があることを指摘しています。第14条は技術やメディアの変化を予期して非常に一般的な表現となっており、「複製行為により発生したあらゆる生成物」を適用対象とすることから、メタデータ・ソフトウェアのソースコード・3Dスキャンやデジタル写真の生データ、その他の将来の技術によって生じるあらゆる形式の生成物が含まれ得るという見解を示しています。

その他、同指令第14条の国内法化がなされた後でも著作権その他の権利を引き続き主張する余地が残る部分があり得ること、同指令第14条をきっかけとした文化遺産機関に対するコンテンツのオープンアクセス化の拡大を推奨すること、などに関して議論が展開されています。

Keeping digitised works in the public domain: how the copyright directive makes it a reality(Europeana Pro, 2020/1/21)
https://pro.europeana.eu/post/keeping-digitised-works-in-the-public-domain-how-the-copyright-directive-makes-it-a-reality

参考:
パブリックドメイン資料の複製物はパブリックドメインのままとすべきである(記事紹介)
Posted 2019年11月25日
https://current.ndl.go.jp/node/39579

【イベント】シンポジウム「デジタル知識基盤におけるパブリックドメイン資料の利用条件をめぐって」(10/12・東京)
Posted 2019年9月17日
https://current.ndl.go.jp/node/39038

EU理事会(Council of the EU)、EU著作権指令改正案を承認
Posted 2019年4月24日
https://current.ndl.go.jp/node/38084