英国政府が著作権法の制限規定見直し案を示したレポートを公表、英国図書館が歓迎の意を表明

2012年12月20日、英国政府が、知的財産制度の見直しに関する“Moderninsing Copyright: A modern, robust and flexible framework”というレポートを公表しました。英国政府は、カーディフ大学のハーグリーブズ(Ian Hargreaves)教授が2011年5月に公表したレポートに対して、その回答となる文書を同年8月に発表していました(E1206参照)。今回のレポートもこの流れに位置づけられるものです。

レポートでは、英国における著作物の利用をより自由なものとするために著作権の制限規定の拡大などを行うという案を示しており、主に次の10の領域について述べています。

・私的複製(Private copying)
・教育における利用(Education)
・引用(Quotation and news reporting)
・パロディ(Parody, caricature and pastiche)
・研究および私的学習(Research and private study)
・非商用目的の研究におけるデータ解析(Data analytics for non-commercial research)
・障害者のためのアクセス(Access for people with disabilities)
・アーカイビングおよび保存(Archiving and preservation)
・公共団体における利用(Public administration)
・著作権表示(Copyright notices)

併せて、この変更が英国にもたらす経済効果は向こう10年間で5億ポンド以上であると見積もっています。政府は、2013年に法案の作成を行い、審議を経て、同年10月の施行を目指すとしています。

一方、同じく12月20日に、英国図書館(BL)が、このレポートの内容に対する歓迎の意を表明しています。具体的には、レポート中で示された制限規定によって、同館で、コレクションのデジタル保存、非商用研究のための視聴覚資料の複製、非商用研究のためのテキストマイニングおよびデータマイニング、館内アクセスのためのデジタル複製の作成、が可能となるとしています。

Consumers given more copyright freedom(Intellectual Property Office 2012/12/20付けプレスリリース)
http://www.ipo.gov.uk/about/press/press-release/press-release-2012/press-release-20121220.htm

Moderninsing Copyright: A modern, robust and flexible framework(PDF:56ページ)
http://www.ipo.gov.uk/response-2011-copyright-final.pdf

British Library welcomes announcement on copyright exceptions(BL 2012/12/20付けプレスリリース)
http://pressandpolicy.bl.uk/Press-Releases/British-Library-welcomes-announcement-on-copyright-exceptions-5e4.aspx

UK copyright laws to be freed up and parody laws relaxed(Guardian 2012/12/20付け記事)
http://www.guardian.co.uk/media/2012/dec/20/uk-copyright-law-parody-relaxed

Government relaxes copyright framework to encourage innovation(Wired UK 2012/12/20付け記事)
http://www.wired.co.uk/news/archive/2012-12/20/vince-cable-copyright-framework

参考:
E1206 – 英国政府,著作権等の知的財産制度見直しに向けた文書を公表
http://current.ndl.go.jp/e1206

テキストマイニングは英国の経済と研究に莫大な影響をもたらす可能性があるが導入には障害も 英JISCがレポートを公表
http://current.ndl.go.jp/node/20410