ALA会長が図書館に電子書籍を販売しない大手出版社を批判、すぐさま米国出版社協会からの反論が

米国図書館協会(ALA)会長のサリヴァン(Maureen Sullivan)氏が、電子書籍の図書館向け販売について米国出版社協会(AAP)を批判する書簡を公表しました。

サリヴァン氏は、ビッグ6と呼ばれる米国の大手出版社のうち、サイモン&シュスター、マクミラン、ペンギンの三社が図書館向けに電子書籍を販売していないという点を問題にしています。そのため、例えば、ニューヨークタイムズによるフィクションのベストセラーランキングの半分が提供できないような状態だそうです。また、図書館は、書籍を購入する余裕のない人々に対して読書と教育の機会を提供する“人々の大学”であり、一般向きには提供されている電子書籍を、図書館の利用者に対しては販売しないというのは差別的(discriminatory)であると批判しています。

この批判に対して、AAP側はすぐに遺憾の意を示しています。電子書籍の貸出に係る諸問題はサリヴァン氏がいうほど単純なものではなく、出版社は、技術上・運用上・財政上の複雑な課題を解決しなくてはならないとしています。これらの解決に当たって集まって議論などを行える非営利の図書館とは異なり、反トラスト法の存在によって商業出版社同じような協働を行うことはできないと事情を説明しています。また、数日後にはサリヴァン氏とAAP加盟社との会合が予定されていたようで、他ならぬこのようなタイミングで道を閉ざすような選択をした点について失望したと締めくくっています。

An open letter to America’s publishers from ALA President Maureen Sullivan(ALA 2012/9/25付けプレスリリース)
http://www.ala.org/news/pr?id=11508

AAP Statement in Response to American Library Association President’s Letter(AAP 2012/9/25付けプレスリリース)
http://www.publishers.org/press/81/

参考:
電子書籍の独禁法訴訟、Simon & Schuster社は和解か?(米国)
http://current.ndl.go.jp/node/20897

「図書館に電子書籍を!」 出版社に対して要求するオンライン署名サイトが登場
http://current.ndl.go.jp/node/20851

米司法省がApple社及び出版社2社を独占禁止法の疑いで提訴
http://current.ndl.go.jp/node/20613

米Penguinグループ、ニューヨーク及びブルックリン公共図書館に電子書籍を提供する実験プロジェクトを開始
http://current.ndl.go.jp/node/21177

米Penguinグループ、OverDrive社との契約を打ち切り、電子書籍・オーディオブックの提供を終了
http://current.ndl.go.jp/node/20157