カレントアウェアネス
No.174 1994.02.20
CA927
サント・ジュヌヴィエーヴ図書館の座席割当てシステム
フランスの大学間共同図書館,サント・ジュヌヴィエーヴ図書館は,目にあまる席とりをなくし,閲覧室の占有を効率よくすることを目的に,座席管理システムを導入した。
利用者の入退館は,自動制御扉に連動したバーコードリーダーによる利用者カードの読み取りによって行われる。利用者は閲覧室に入る前に,受付カウンターのタッチスクリーン端末で,座席を予約しなくてはならない。希望する座席を指定することや,並んだ2席を予約することもできる。座席の予約が済むと,座席番号の入ったチケットが発行され,予約後30分以内に入館しなければならない。予約の取り消しも認められている。また,30分以内にもどれば,席を確保したまま出入りができるが,この時間を過ぎると他の利用者に割り当てられる。退館することが決まっている場合は,閲覧室の窓口で座席を取り消すと,別の閲覧者が利用できる状態になる。加えて,1日に1回だけ,昼食をとるため1時間座席を取っておくことができる。1時間後に戻らなければ,その座席は空席とみなされる。
座席管理と併せて,同館は閲覧者の再登録システムに取り掛かった。年間の再登録は5万人以上にのぼり,業務の負担となっていた。最初の登録から26か月経過すると,端末の画面やチケットに,受付カウンターでの再登録を促すメッセージが現われる。
これらのシステムは,1992年6月に始動され,いくつかの改善後,十分に稼働したのは11月半ば以降となった。技術的な問題の外に,初期の使用では,閲覧者の操作ミスが障害となった。操作上のトラブルには,画面メッセージや担当者が援助を行った。
閲覧者の反応はそれほど悪くなかったが,開館時の行列はなくならなかった。座席の選択が可能なことが原因らしい。座席が指定できなくなる限界を,閲覧室の占有率が65%の時と定めているが,30%まで下げなくてはならないだろう。開館時と昼食の時間には行列ができ,閲覧者は座席が開くのを待たざるをえない。そのうえ,予約した座席に座れないというトラブルも生じるが,閲覧者はうまく対応している。システム導入以前は,715席のうち500名の利用で満室とみなされたのに比較すれば,座席の利用率は明らかに向上した。なお,715席のうち10席ほどは,教職員あるいは特別な場合のために取りおかれている。
サント・ジュヌヴィエーヴ図書館の閲覧者の半数は21才未満である。新しいシステムは,落ち着きのない彼らの行き来を制限すると思われたが,統計上はほとんど変わりがない。しかし,閲覧室は,より静かになったことは確かである。
l991年には7万人分の情報を保有していた閲覧者ファイルも,1993年には10万入分にふくれあがった。1992年10月半ばから11月半ばまでの統計によれば,昨年と比較して新規登録者は約7%増加しているが,入館者数は約8%減少している。一方,資料の利用冊数は約30%増え,開架資料の利用が前年より9割増となった。入館システムの合理化は,利用状況に大きな影響を与えていると言ってよいだろう。
野口尚子(のぐちなおこ)
Ref: Boisard, Genevieve. Le systeme d'affectation de place a la Bibliotheque Sainte-Genevieve. Bull Bibl Fr 38 (2) 55-62, 1993