CA846 – IFLAの活動を振返って / 木藤淳子

カレントアウェアネス
No.160 1992.12.20


CA846

IFLAの活動を振返って

IFLAの専門理事会(PB)は1990年秋,当時56あった専門活動単位(コア・プログラム,部会,分科会,ラウンドテーブル(RT))に対して,1986-91年中期計画(MTP)期間の活動報告の提出を求めた。報告書の提出率は70%余りに過ぎず,内容的にも十分なものではなかったが,MTP期間中のIFLAの活動の概略を把握することはできる。以下に,理事の一人,コール氏が報告書をもとに行ったIFLAの活動の評価の中から,いくつか特徴的なものを選んで紹介してみたい。

MTP開始時に1150(123か国)だったIFLAの会員及び会友は,1991年には1350(132か国)になった(13%増加)。なお,この132か国の65%に当る86か国がいわゆる第三世界に属している。

この期間には,1986年の東京大会以降6つの年次大会が開かれて,総計1000に近いペーパーが提出され,毎回1500〜2000人もの人が公式に参加した。1988年のシドニー大会からは新しいシステムが導入された。特に,ワークショップ,寄稿論文セッション(論文を公募し,集まった中から発表論文数編を選考する),ポスター・セッション(展示形式で発表を行う)の3つの新設プログラムは特筆すべきであろう。ポスター・セッションにはまだ定まった評価は下せないが,最初の2つは成功を収めたといってよい。ワークショップは予想以上の反響を呼び,当初の制限を超えた数が設けられ,特定の問題を徹底的に論じ合う場となった。中には複数の専門活動単位が共催するワークショップもあった。寄稿論文セッションでは,採用されたペーパーの著者が大会に公式に招待されるため,通常では参加の機会のない図書館にも機会を提供している。

分科会の数は32のまま変化しなかったが,RTは4つ増えた。IFLAの専門活動には,このほか特別な問題についてのワーキンググループがあるが,この中にはいずれRTに昇格しそうなものがある。分科会やRTの基本的な活動パターンは,PBが資金援助してくれそうなプロジェクトを企画し,成果を刊行物で発表するというものである。MTP期間中に実施され,一定の成果をあげたと評価できるプロジェクトの数は,150以上もあり,この内90がPBからの資金援助を受けている。特に第三部会(公共・学校図書館)では,複数の分科会にまたがるプロジェクトを4つも成功させている。65のプロジェクトがその成果をモノグラフで発表しているが,まだ継続中のものが40以上あるので,最終的には100近いモノグラフが刊行されることになろう。

この期間には各活動単位から,17のガイドライン,10のディレクトリが発行された。この中には「公共図書館のガイドライン」のように,日本をはじめとして10か国語に翻訳されたものもある。また,13の分科会やRT及び書誌調整部会がリーフレットを出版したが,特に,相互貸借・資料提供分科会や美術図書館分科会のものは,数多くの言語に翻訳された。こうした出版物によって,IFLAの活動に直接携われない特に途上国の図書館も,その成果の恩恵に与ることができるようになるのである。

コア・プログラムも,活動パターンは分科会・RTと似ているが,より大規模なプロジェクトをより多く行い,より多くの刊行物を出している。MTP期間中にはPAC(資料保存)の活躍が目立った。また,1987年には,UBCとIMPが1つに統合してUBCIM(世界書誌調整と国際MARC)となり,TDFが拡張されてUDT(データの世界的流通と電気通信)として再編された。この結果コア・プログラムの数は6から5に減じた。

木藤淳子(きとうじゅんこ)

Ref: Kohl, Ernst. IFLA's achievements under the Medium-Term Programme 1986-1991. IFLA 18 (2) 124-134, 1992.