CA630 – 第55回IFLAパリ大会最近のIFLAでの書誌情報活動 / 田村貴代子

カレントアウェアネス
No.123 1989.11.20


CA630

第55回IFLAパリ大会
−最近のIFLAでの書誌情報活動

国際的な書誌情報活動の企画とその推進は,IFLAの5つあるコア・プログラムの1つ,UBCIM(世界書誌調整・国際マークプログラム)および32の分科会の中の関連ある分科会を中心に,さらにUNESCOとの密接な関係のもとに強力に進められている。この活動の中心的役割を果しているのが,UBCIMである。

UBCIMは,1986年にUBC(世界書誌調整)とIMP(国際マークプログラム)が合体したもので,事務局は,英国図書館におかれているが,1990年4月からは,西ドイツの国立図書館(フランクフルト)に移る。おもな事業は,1)書誌情報の国内的,国際的レベルでの自由な交換と利用に関するシステム開発と標準化の促進 2)国際的書誌記述とそのフォーマットの標準化に関する編集と刊行 3)書誌コントロールの国際的な雑誌の刊行である。

現在,ISBDs(国際書誌記述)の開発と更新およびユニマーク・フォーマットの改良と普及が進められている。ISBD(M:図書1987),ISBD(NBM:非図書資料1987),ISBD(CM:地図1987),ISBD(S:逐次刊行物1988)が刊行され,以下のものが準備されている。ISBD(PM:楽譜)が最終案の投票中であり,ISBD(CF:コンピュータファイル)が編集中,ISBD(A:古書)が最終案検討中,ISBD(CP:論文レベル)と,新聞のガイドラインが刊行されている。さらに共通フレームを示すISBD(G:総合)の再検討のための委員会が準備中である。このようにISBDsの検討は最終段階に入っているが,今後は,このISBDsの普及のため,各国との協力関係を保ちながら,各言語への翻訳を支援することとしている。

マークに関しては,各国レベルのマーク化の奨励と,国際交換用のユニマークの普及を押し進めているが,1988年IFLAシドニー大会では,ワークショップを開きユニマークの普及活動を行った。1987年版のユニマーク・マニュアルは,多言語多文字処理を考慮したフォーマットになっているが,日本語の記録方法の一部に疑問があるため,委員会にコメントを提出している。さらに,典拠版のユニマークが開発され,第4案が各国に配布され,現在,各国のコメントを検討中で,近日刊行の予定である。

UBCIMは,各国レベルのマークをユニマークに変換する事業を進めてきたが,現在実施または開発中の国々は,アメリカ,カナダ,フランス,西ドイツなどである。一方,ユネスコの援助のもと,ユネスコが2次資料の国際的標準フォーマットとして開発したCCF(Common Communication Format)へのユニマークの変換,ユニマークからCCFへの変換が計画中である。

一方,典拠ファイルの調査として,各国にアンケートを配布し,回答の分析を進めている。これは,今後の国際的典拠ファイルの構築に向っての研究である。一方,UBCIM刊行の雑誌「International Cataloguing & Bibliographic Control」は書誌コントロールに関する各委員会・分科会,外部の標準化活動などの報告をもり込んでいる。

今後の研究課題は,1)全国書誌作成における費用対効果 2)ISBDの簡略記述の可能性 3)全国書誌の著作権・知的所有権 4)コア・プログラムのUDT(データの世界的流通と電気通信)のもとでの書誌データの保護への影響 5)標準書誌記述,主題索引におけるOPACへの影響 6)遡及入力の標準化 7)新しいメディアでの全国書誌の提供の可能性 8)典拠レコードの問題調査などがあげられている。

一方,国立図書館長会議の国際マークネットワーク諮問委員会(IMNAC)は,CD-ROMの汎用ソフトウェアの共同開発を進めてきたが(CA578参照),その成果物が,1989年IFLAパリ大会の展示会場に出品された。これはイギリス,フランス,西ドイツの各国立図書館が作成したマークをCD-ROM化したもので,同一のソフトウェアで稼動する。CD-ROMの画面表示は,4ヵ国語(英語,フランス語,ドイツ語,イタリア語)が選択可能で,回答表示もユニマーク・フォーマット,各国マーク・フォーマット,目録カード形式など選ぶことができる。英国図書館(100万件 1950〜1985,1986〜を含む。CD-ROM3枚),フランス国立図書館(38万件1975〜を含む。CD-ROM1枚),ドイツ国立図書館(45万件 1986〜を含む。CD-ROM1枚)のCD-ROMは製品化されていた。国立図書館のマークをCD-ROM化した国々は,日本,アメリカ,カナダ,イギリス,フランス,西ドイツ,オーストリア,オーストラリア(開発中),台湾などである。

田村貴代子