CA629 – 第55回IFLAパリ大会議会図書館分科会を中心に / 藤田初太郎

カレントアウェアネス
No.123 1989.11.20


CA629

第55回IFLAパリ大会 
−議会図書館分科会を中心に

今年のIFLA大会は,「経済の中における図書館と情報−昨日,今日,明日」という統一テーマのもとに8月19日(土)から8日間の会期でパリで開催された。フランスでIFLA大会が開かれるのは1957年以来32年ぶりのことであり,主会場としてポルト・マイヨーにある国際会議場パレ・デ・コングレが充てられた。80カ国から史上最高の2,000人以上の参加者が集り(日本からの参加者は約60人),国立国会図書館からは金中収集部長,田村情報処理課長補佐と筆者の3人が参加した。

開会式

開会式は,21日(月)午後パレ・デ・コングレ内の大ホールで行われ,ゲー会長が革命200年のパリでIFLA大会が開かれる意義についてフランス革命のモットーである自由・平等・博愛に関連づけて格調の高い演説をした。基調講演はヨーロッパ著作権局ジャック・ミシェル次長が「図書館・情報・経済」と題して行い,情報分野における図書館の位置,図書館の経済的パラメーター(財政状況,出版物の値上りなど),技術的な影響(コンピュータ化,ニューテクノロジー,コスト増),情報の価値(重要性,把握の難しさ)について統計を交えて語り,厳存する経済的制約に目を背けることなく,経済的諸要因についての認識を深めることによって制約の克服に前向きに貢献するよう参加者に訴えた。最後に,フランスの文化大臣ジャック・ラングが歓迎の辞を述べると共に新しい「フランス図書館」の構想について熱弁を振った。

議会図書館分科会

今回の著者のIFLA参加の主たる目的は議会図書館分科会に出席することであった。22日(火)午後に開かれたオープン・ミーティングでは,まず「ポーランド・ハンガリーの議会図書館間の二国間協力の経験」について両議会図書館長から報告があり,東欧の現在の状況に対する関心とも重り合って,出席者の注目を集めた。次に「議会情報システムとトルコ議会情報センター」について同センター長が報告した。この二つの報告は,開催地がヨーロッパであることと分科会が開発途上国の議会図書館の発展に重点を置いていることの反映である。最後に,今回限りで分科会の委員長を退くイギリス下院図書館エングルフィールド副館長が,「議会図書館とIFLA−理想と現実」と題する報告において,1976年に専門図書館部会行政図書館分科会から独立して調査図書館部会の独自の分科会として発足して以来の活動を集約した。この間,議会図書館自体も調査機能の充実など大きく発展し,加盟機関の数の増加と地域の拡大を見,他方では,草創期以来の中核的メンバーが退職の時期を迎え,分科会は転換期にあるが,今後ここで検討すべき共通の課題も多々あるということであった。

ワークショップは,ホスト国の議会をテーマに行うという分科会の慣例に従い,25日(金)丸一日かけて「フランス国民議会議員のための情報サービス」というテーマの報告・質疑と議場,図書館等の見学がブルボン宮(フランス下院)を会場にして行われた。革命200年・国民議会200年記念の展示会が開催されており,見学の一環としてこれを参観する機会も得た。

19日(土)及び24日(木)の2度にわたり行われた常任幹事会にはオブザーバーとして出席したが,ファースト・ネームで呼び合う和気あいあいたる雰囲気の中で,しかし議会関係者の集まりにふさわしく整然と議事が進められた。役員改選のほか,議会図書館間のコンピュータ接続,多言語シソーラス,議会図書館の機構上の位置づけに関するアンケート調査,立法図書館ガイドライン,議会図書館ダイレクトリー改訂版の刊行,ストックホルム大会のプログラム案,次期(1991−96)の中期計画案などが議題に供された。地域活動,特に開発途上国に対する協力・援助が重視されていたが,これは第三世界に対する援助というIFLAのコア・プログラムの反映であると共に欧米の議会関係者の国際的な関心を示すものという印象を受けた。

当分科会の特色とも言える恒例のセクション・ディナーが23日(水)夕刻に持たれ,常任幹事その他の有志が集まり,業務上・業務外の話に花が咲き延々12時近くまで続いた。この機会や別の非公式の場で率直な声を聞くことができ有益であったが,日本の国際的地位に相応した寄与への期待を実感させられたIFLA参加でもあった。

藤田初太郎