CA1557 – IFLAのCIPプログラム調査 / 柴田洋子

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カレントアウェアネス
No.284 2005.06.20

 

CA1557

 

IFLAのCIPプログラム調査

 

 国際図書館連盟(IFLA)書誌分科会は,2004年,戦略計画「書誌情報の提供・調整における出版界との協力関係の促進」の一環として,世界各国の国立図書館を対象にCIP(Cataloging In Publication)プログラムについての国際的な調査を行った。本稿では,この調査の概要について紹介する。

 

1. CIPとは

 CIPとは,図書を出版する際,予め作成した書誌情報を標題紙裏面などに印刷することである。出版に先立って出版者から提供される校正刷に基づき,国立図書館やその他の全国書誌作成機関がその目録作成に必要な書誌情報を作成し,それを出版者が図書に印刷し,出版する。これにより,図書館の整理業務の合理化と迅速化が図られ,新刊書をより早く利用者に提供することが可能になる。また,目録作業の費用を節約できるようにもなる。1971年に米国議会図書館(LC)が開始し,その後英国やカナダ,韓国(E016参照)などでも導入され,世界規模の広がりをみせている。なお,日本では実施されていない。

 

2. 調査の背景および目的

 この調査は,2001年にボストンで開催されたIFLA大会において,出版者と国立図書館の代表が,相互の関係改善に同意したことを嚆矢とする。翌年のグラスゴーの大会では,両者の関係においてCIPプログラムの重要性が認識され,プログラムを調査することが関係の改善や理解に有用な情報をもたらすという結論に至った。その後,2003年から2004年にかけてLCを中心に調査が実施され,2004年,ブエノスアイレス大会で調査結果が発表された。

 調査の目的は,現在行われている全てのCIPプログラムを把握し,各プログラムの現状や様々な情報を収集することである。また,プログラムにおける出版者との関係について多様な意見を得ることも目的の一つである。これらを有効に活用することで,個々のプログラムの効率を高め,図書館が提供するサービスの質を向上させ得るという予測もあった。

 

3. 調査方法および内容

 調査は,実質的にそれを担当したLCのウェブサイト上のフォームに記入し,送信する形式である。

 各図書館は,「回答した図書館の情報」「CIPプログラムの実施の有無」「CIPプログラムの実施状況」「目的と実施方法」「適用範囲」「出版者の義務」「今後について」の7項目に分類された質問に回答した。

 

4. 調査結果

 調査には42館が回答した。そのうち,CIPプログラムを現在実施中の図書館は25館を占め,終了した図書館が2館,2005年に開始予定の図書館が3館であった。

 CIPプログラムで作成される書誌レコード数は年間18万件を超え,プログラム全体で24以上の言語をカバーしていることがわかった。このことは,コピーカタロギングのソースとなる書誌レコードを世界中の図書館が膨大に有すること,そして,各図書館がCIPプログラムを実施することで,オリジナルカタロギングに必要な労力や時間,費用などの資源を相当節約できていることを意味する。

 また,プログラムの目的やその意義について多様な回答が得られた。具体的には,全国総合目録の構築,書誌データの標準化と簡素化,目録作業の重複の削減,図書館の収集業務における効率性向上,書籍の販売促進などが挙げられている。

 目録作成の適用範囲に関しては,図書だけでなく,逐次刊行物や楽譜,電子書籍,視聴覚資料,インターネット情報資源なども範囲内とする図書館が少数ながら見られた。また,プログラムに参加している出版者数(15〜14,000)やCIPレコード作成に要する時間(1〜12日),CIPレコードが利用可能となる時期(出版の1〜100週間前)などで,国により著しい差異が見られた。

 その他,図書館または出版者に有益なプログラム促進策や出版者が努力すべきプログラム改善策についても多様な回答を得た。これらの回答には,ある図書館では現在実施中の方策でも,他の図書館にとっては今後の計画として考えられていることもあり,興味深い結果となっている。

 

5. 調査結果のまとめ

 IFLAのCIPプログラムのガイドとして現在出版されているものは,UBC(Universal Bibliographic Control)国際プログラムによる『CIPのための望ましい基準:CIPデータシートおよび図書におけるCIPレコード(Recommended standards for Cataloguing-in-Publication: the CIP data sheet and the CIP record in the book)』のみである。この基準が1986年に出版されて約20年が経過するが,その間,科学技術の目覚しい発展や世界中の出版件数の急激な増加,ネットワーク系出版物を始めとする新たな電子的資源の登場など,様々な面で図書館を取り巻く環境が変化している。それに伴い,CIPプログラムの対象範囲を電子的資源にまで拡大したり,プログラムの処理にインターネットを活用するなど,多様な発展を遂げてきたことが,今回の調査で明らかになった。図書館の現状に適応するよう『CIPのための望ましい基準』を再考すると共にCIPプログラムの運用方法も再検討するべき時期が来たことを調査結果のデータは示している。

 また,CIPプログラムは,実行の有無を始め,実行中の内容についても国によって著しく差があることがわかった。しかし,目録作成に必要な人材,時間および費用の節約,目録の標準化の促進,出版者への支援,図書館と読者へ提供するサービスの向上などプログラムの普遍的な使命と意義は回答した図書館の間で共有されている。

 

6. 今後の展望

 多くのCIPプログラムで義務付けられていないために出版者の参加数が不十分であること,参加している出版者でもプログラムの意義や機能に対する理解にばらつきがあることなどが問題となっている。図書館が節約できた目録作業に要する費用を資料購入に充てたり,新刊書に関する情報がより正確かつ迅速に読者や書店に提供されることで,多くの書籍が出版前に注文を受けることができるようになれば,出版者にとっても大きな利益となるだろう。今後CIPプログラムの導入および定着を図るにあたっては,より多くの出版者が参加することが不可欠であり,図書館界と出版界との協力関係の構築が今後の鍵となることが今回の調査結果から読み取れる。よって,CIPプログラムが図書館のみならず出版者や読者のためにも意義があるということを丁寧に説明し,積極的に協力してもらえるよう努めることが必要である。

書誌部書誌調整課:柴田 洋子(しばた ようこ)

 

Ref.

Cello, John et al. Survey of National CIP Programs:Results and Analysis. IFLANET. 2004, 16p. (online), available from < http://www.ifla.org/VII/s12/pubs/s12-Survey-National-CIP-Programs.pdf >, (accessed 2005-02-28).
Library of Congress. “IFLA CIP Survey Homepage”. (online), available from < http://www.loc.gov/catdir/cipsurvey/index.html >, (accessed 2005-02-28).
IFLA. Recommended standards for Cataloguing-in-Publication: the CIP data sheet and the CIP record in the book. London, IFLA International Programme for UBC, 1986, 30p.
李尚妊. 韓国CIP制度の導入と運営. アジア情報室通報. 1(1), 2003, 13-15.

 


柴田洋子. IFLAのCIPプログラム調査. カレントアウェアネス. 2005, (284), p.3-5.
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