CA791 – アメリカ合衆国のリサイクル事情 / 佐藤泰幸

カレントアウェアネス
No.150 1992.02.20


CA791

アメリカ合衆国のリサイクル事情

合衆国における紙の消費量は,年間4%の率で増加している。合衆国から海外へ出荷される船荷の1/4は古紙であり,その大半はアジアとメキシコへ輸出される。だから,貿易赤字を解消するためにも,リサイクルに努めなければならない,と思ったからなのかどうかわからないが,近年の合衆国は,リサイクルがブームらしい。

例えば,1987年には10万冊以上の蔵書を持つ法律図書館のうち20%しか古紙のリサイクルを行っていなかったが,1990年1月には59%がリサイクルを行っている。

また1988年に,EPA(環境保護庁)が連邦政府の省庁に対し再生紙の利用を指示したこともあり,合衆国連邦政府・連邦議会は,再生紙を使用することが義務づけられている。その後,下院の提出した法案にも,議会の再生紙利用を求めるものが含まれた。(1991年10月現在)

というわけで,合衆国の国会議事堂・上院・議会図書館・最高裁判所から排出されている年間約9400トンの古紙は,その65%がリサイクルに回されている。

図書館でリサイクルされている紙類の主なものは,古新聞・コンピュータ用紙・ルーズリーフ用紙・印刷物の見本刷り等であるが,古紙回収業者への売却金は,そのまま図書館・大学等の収入となる訳で,これは近年の合衆国の文化・教育関係機関の財政難を反映しているようにも見えないでもない。

佐藤泰幸(さとうやすゆき)

Ref: Briscoe, G. Reuse, reduce, recycle. Libr. J. 116 (17) 43-44, 1991.10.15