カレントアウェアネス
No.264 2001.08.20
CA1414
司書が足りない!―米国の緊急対策―
米国の博物館・図書館サービス局(Institute of Museum and Library services:IMLS)は,2001年7月17日,緊急アピールとして,全米の大学を対象に,全国的に深刻な司書不足を解消するための教育プログラムに対して,総額200万ドル(約2億5千万円)の助成金を与えることを発表した。助成対象プログラムには,図書館情報学を専攻する学生を増やすことや教育内容の充実,現職図書館員の再教育などが含まれ,特にデジタル情報技術の習得が重視されている。
この背景としては,90年代以降の情報技術専門家の急激な需要増に伴い,従来から情報・知識の収集,組織化,評価を専門としてきた司書が見直されていること,それにもかかわらず80年代に相次いだ図書館学校(図書館情報学大学院)の閉鎖や司書職における給与面での不満などの理由から人材供給が減っていることが考えられる。
すでに,ネイティブアメリカンやヒスパニックに対するユニークな図書館情報学プログラムを開発したアリゾナ大学や,現職教員に対してWebによる学校図書館情報技術の修士コースを設置する予定のマンスフィールド大学(ペンシルバニア)への助成が決まっている。
なお,IMLSは1996年の博物館・図書館サービス法によって設置された連邦独立行政機関であり,主要任務のひとつとして,先進的サービスに取り組む全米の博物館・美術館,図書館,文書館などへの資金助成を行っている。1970年に設置された図書館情報学国家委員会(NCLIS)が図書館振興のための全国政策策定機関とすれば,IMLSは,その実施・誘導機関と位置づけられよう。ちなみに,英国で昨年発足した博物館・文書館・図書館国家評議会(Resource)は,両者の機能を併せ持っている。
柳 与志夫(やなぎよしお)
Ref:IMLS. IMLS responds to nation's shortage of librarians:funds recruitment, education and technology training.[http://www.imls.gov/whatsnew/current/071701-1.htm](last access2001. 7. 1)