CA1110 – 新聞・新聞情報の電子的保存に関するフォーラム / 篠原ミカ

カレントアウェアネス
No.210 1997.02.20


CA1110

新聞・新聞情報の電子的保存に関するフォーラム

新聞と新聞情報の電子的保存に関するフォーラムが1996年3月にロンドンにおいて開催された。これは,英国図書館新聞図書館と英国メディア・ライブラリアン連盟の共催によるものである。英国の全国紙およびいくつかの地方紙の代表者等が集まり,新聞の電子化とその保存について議論がもたれた。

インターネット

インターネットで利用できる英国紙としては電子版Telegraphが先駆的なものとしてあげられる。1994年11月にウェッブ・サイトを開設した,英国内では最も電子化に積極的な新聞である。同紙のオリジナル(印刷版)の25%から30%が掲載されているが,記事は全て電子版用に書き直されている。記事は印刷版と同様に,国内ニュース,国際ニュース,スポーツ,地域面,特集,マンガ,クロスワード等の分野に分けられている。ユーザーは初回の利用の際に登録をしなくてはならないが,利用料は無料である。新聞社が登録を要求するのは,それによって利用者の数,特徴を把握してそれをもとに広告主を獲得していこうという意図があるからである。

広告主の中にはすでに大手企業も名をつらねている。およそ18万5,000名が登録し,毎日の利用者数は1万から1万5,000名である。英国内の利用者にはビジネス関係者や専門職が多いが,海外からの利用者はたいていは海外在住の英国人であり各家庭からアクセスしている。現在のところ,当日分のみならずバックナンバーも収録していく予定である。

今回のフォーラムではNews International社のJudith Dunnがたいへんうまくいっている事例として,インターネット上のThe Times Higher Educational Supplementの本文記事と求人ページを紹介した。高等教育部門におけるインターネットの普及を反映して,インターネットを通じた同紙の利用は増加し,広告収入増につながっている。1996年1月2日にはThe Times本紙とThe Sunday Timesもインターネットでアクセスできるようになった。ニュースはオリジナルの記事とリンクしており,1日に4回更新されている。広告も掲載されており,また当日分,バックナンバーともキーワードで検索することができる。The SunThe News of the Worldも近い将来インターネットで利用できるようになるはずであるが,オリジナル全文というわけにはいかないであろう。著作権の問題,とりわけ写真の著作権がからむからである。

著作権の問題

この問題についてはNick Braithwaite弁護士がマルチメディアに新聞記事を再録することにかかる主な著作権問題について概説した。

1989年8月1日から英国法のもとでは雇用中に作られた著作物については雇用者に著作権が属することになった。1956年の著作権法のもとにある,1989年以前に作られた資料については,新聞社は著作権処理しなければオンラインであれウェッブ上であれ,再版することはできない。一方,1989年法においてはフリーランサーはその著作物について完全な著作権を保持することになったが,1956年法のもとではフリーランサーに写真等を委託した者が著作権を取得していた。

その他の問題

参加者たちはインターネット上の新聞はいまだ満足のいく情報獲得手投とはなっておらず,オンライン全文検索システムの方がはるかにすぐれた情報検索環境を提供しており,ビジネスや調査研究におけるニーズをよりよく満たしているという印象をもっていた。しかしながら,一般の人たちは,無料で検索できるのであれば,インターネットで情報をみつけるのに余分の時間を費やすこともいとわないであろう。

インターネットのアクセスを有料にすべきかどうかということについても議論があった。経費を主に広告主が負担すべきか,あるいはユーザー自身が支払うべきかということについてである。

このほかに古い資料の電子形態への変換について,英国図書館新聞図書館長Geoff Smithが英国図書館の18世紀の新聞のマイクロフィルム電子化実験を紹介した。会場での議論を通して明らかになったのは,新聞業界は古い新聞の遡及的な変換についてはあまり関心がないということである。英国図書館のほかにもいくつかの試みがなされてはいたが,いずれも非経済的であり結果もかんばしいものではなかった。

同フォーラムを今後毎年開催していく方向で合意をみて,今回のフォーラムは終了した。

篠原 ミカ(しのはらみか)

Ref : British Library Newspaper Library Newsletter (20) 5,1995 ; (21)6-7, 1996