CA1037 – 図書館職員の職務満足感 / 長嶋左央里

CA1037

図書館職員の職務満足感

人は何を求め,何のために働くのか。働くことのもつ意味は,きわめて多様である。その中で,職務満足感は,ひとりひとりが充実した職業生活を営み,ひいては,図書館全体が充実・発展してゆくために非常に重要である。

では,職務満足感とは何か。仕事をしていて感じる満足感といえばそれまでだが,いい仕事をしてほめられたときに感じる喜び,仕事を達成した後の満足感,意義ある仕事をしているという満足感という答もあるだろう。しかし,このような答だけではない。仕事に直接関連するものとしては,他にも昇進したこと,責任ある仕事を任されたことなどが考えられる。また,人間関係などの職場の雰囲気や快適なオフィス環境,さらには,高い賃金やボーナスも満足感に大きな影響を与えると思われる。

図書館職員の職務満足感の研究は1970年代に報告されるようになったが,多くなってきたのは1990年に入ってからである。その研究報告では,職務満足感と図書館サービスの質と量には,密接な関係があることや,図書館の管理者は,部下,同僚の安寧(well-being)という職員の感情の視点から,職務満足感に関心をもつべきだといったことが主張されている。

最近報告された図書館における職務満足感の研究で,13のミシガン州立大学図書館で勤務するサポートスタッフを対象にしたアンケート調査がある。この調査の背景には,サポートスタッフが全大学図書館職員の半数以上を占めており,重要な役割や責任を担うようになってきたことがある。調査項目は,以下のとおりである。1)属性質問(職階,常勤/非常勤,組合への帰属,現在の図書館での勤務年数,図書館での職務経験年数,最終学歴,現在閲覧業務であるか,主な仕事内容,コンピュータの使用)2)職務満足感に対する質問(昇進,給与,臨時報酬,コミュニケーション,職務運営,諸手当,同僚,仕事内容,直属の上司)

回答結果を全体的に見ると,満足しているのが,同僚,仕事内容,直属の上司に対してで,一方,不満を感じるのが,昇進,給与に対してである。また,コミュニケーションの面では,やや不満と感じている。回答結果を分析すると,昇進,給与に関しては,サポートスタッフだからという理由で正当に評価されていないとし,不満に感じている。また,コミュニケーションに関しては,多くの場合,実際に業務をする職員が政策決定や問題解決に際して,意見を述べる場がないので不満に感じているといえる。

この結果が示唆するものは,サポートスタッフのみならず,おそらく図書館で勤務する全職員にあてはまるであろう。管理者は職員が感じている満足,不満を知り,職務運営の改善に努めた上で,業務を遂行させていくべきである。昇進,給与面の改善は難しいにしても,できる限り正当な評価が望まれる。

一方,職員の側で努力すべきことは何であろうか。コンピュータの導入を例に考えてみよう。情報技術の発達は目覚ましく,図書館は常にこれに対応していかなければならない。新しいシステムの開発,導入に伴い,図書館業務は急激に変化していくだろう。その時,満足感を得るためにはどのような導入の仕方を考えれば良いのか。例えば,コンピュータを導入し,業務が機械操作中心となることで単純作業が増加するだけだったり,無闇に業務を拡大するなど過剰労働になったりするようでは逆効果である。単に機械化することだけを目的としてコンピュータを導入するのではなく,何を改善するための導入なのかはっきり理解した上で開発することが必要である。

そもそも業務の効率化ということで,いくら機械化を推し進めても最後には機械化出来ないものが残る。図書館専門職が現在行っているレベルでの利用者サービスは,とって代わることが出来ないものである。そして,それこそが図書館員に満足感をもたらすものであろう。

また職員は単なる導入されたシステムの利用者であるだけではなく,システムの仕組みを理解し,そのシステムを改善することに能動的に働き掛けることのできる知識を持つことも必要となってくる。さらに職員はコンピュータに関する知識だけではなく,機械化に伴う業務の拡大に対応するために,実際に携わっている業務だけでなく関連する分野の業務を知ることも職務満足感のためには重要となる。こういったことも含めて,職場に業務改善委員会や勉強会といった活動の場を設けてはどうか。そして,職員はこのような活動に自主的に積極的に参加し,活動を継続的に行い,職場の体質改善や発展を図っていくべきである。

職務満足感は,仕事の内容だけでなく,職員自身の意識の在り方によっても左右される。制度的,技術的にいかに完備し発展しようとも,図書館を支えるものは,そこに勤務する図書館職員である。これからの図書館職員には,いろいろな意見を調整し,諸々の新しい事態に意欲をもち,敏感にかつ臨機応変に対応していく能力が必要とされる。そのためにも図書館職員は,自分は単なる歯車のひとつであると思わないように,つねに問題意識をもって職務を遂行していくべきである。その意識により,新たなやる気が生まれ,それが職務に対する満足感となるのである。

長嶋佐央里(ながしまさおり)

Ref: Voelck, Julie. Job satisfaction among support staff in Michigan academic libraries. Coll Res Libr 56 (2) 157-170, 1995
Whitlatch, J. B. Automation and job satisfaction among reference librarians. Computers in Libraries (11) 32-34, 1991