カレントアウェアネス
No.194 1995.10.20
CA1031
カナダ国立図書館を中心としたリソースシェアリングの動き
カナダ国立図書館(NLC)は,1997年を目標年度として,図書館業務全体をカバーするシステムAMICUS(CA957参照)の構築を進めている。全国的なリソースシェアリング(用語解説T2参照)のためのシステムもAMICUSの重要な一部となる予定であり,そのための計画策定が進められている。
まず,1985年から88年にかけて各種の会合を開き,関係者から聴取した意見に基づいて,90年と91年にカナダのリソースシェアリングの現状および将来方向を論じた文書を刊行した。1993年にはワーキンググループを発足させ,情報ハイウェーの発達や政治,経済,社会の変化を考慮しながら計画を再検討した。カナダ図書館協会(CLA)の会合およびフランス語圏のドキュメンテーション科学技術推進協会(ASTED)の会合の席上でも,全国の代表によって討議された。
両会議で確認されたリソースシェアリング推進にあたっての重点課題は次の通りである。
・協同コレクション構築:全国的なリソースシェアリング実現のためには,図書館間の協同コレクションの構築が前提条件である。ここで言う全国的な協同コレクションには全国的に増加しつつある電子文献も含める必要がある。このための準備作業として重要なのは,参加館のコレクションの充実している部分と手薄な部分の評価である。
・総合目録:NLCで作成されている総合目録はリソースシェアリングの基盤となってきた。将来的には,この総合目録に加えて,各地域単位の目録が整備され,両者が全体として新たにある種の全国総合目録を形成することが予測される。また,AMICUSや他のデータベースの書誌情報を各館の所蔵情報とリンクさせることにより,より高度で柔軟な情報検索を実現することも検討すべきであろう。
・情報・資料の提供:サービスのばらつきを防ぐため,提供のコストや時間等の基準を作成する。フルテキストデータベースを充実させ,伝統的な提供の方式と新しい技術との協調を図る。多様な提供方式の中から適切なものを選択できるよう,利用者教育を充実させる。
・公平なアクセス:情報への公平なアクセスの保障はリソースシェアリングの究極的な目標である。情報ハイウェーの発達はこの目標を達成する方法を変えつつある。インターネット等様々な手段を通して,人々がAMICUSデータベースを広く利用できるようにする。また,身体障害者のアクセスの保障に関する現行計画を見直す。
・図書館間相互貸借(ILL):ILLは補足的サービスと見られることがある。しかし,「収集」以上に「アクセス」が重要となってきている現在,リソースシェアリングの中心的なサービスとしてのILLは目録作業やレファレンスと同様に図書館全体の中心的なサービスとして位置付けられなければならない。
・著作権:電子出版物の利用や文献の複写の際に,著作権法が大きな障害とならないように関係機関に働きかける。
・図書館と情報ハイウェー:情報ハイウェーの発達が図書館に新たな脅威と,発展の機会を与えている。NLCは他の機関や協会と共に情報ハイウェーに関する意見を表明し,また関連した様々な活動に参加することにより,これをカナダ国民が活用できるように努めるべきである。
NLCは,現在こうした重点課題を組み合わせて,効果的な国家戦略を策定しようとしている。
1990年代はリソースシェアリングの10年とも言えるかも知れない。ここで提言された課題の多くが比較的早く達成されるであろうが,AMICUS完成予定の97年を過ぎても達成されそうもない課題も散見する。さらにリソースシェアリングを取り巻く情勢は今なお変化し続けているので,重点課題とその実現方策について,今後も定期的に再検討することも重要である。
門脇直美(かどわきなおみ)
Ref: Winston, I. Finalizing a resource-sharing strategy. National Library News 27(2)7-9, 1995
Lunau, C. A national resource-sharing strategy. National Library News 27(3/4)17-18, 1995