2. 外国学術雑誌の全国的な供給状況 / 歳森 敦

2. 外国学術雑誌の全国的な供給状況

2.1. はじめに

 本章では主として印刷版外国学術雑誌の全国的な所蔵状況について,NACSIS-CATの所蔵レコード及びNDLの外国雑誌所蔵レコードを集計することで分析を進める。昨年度の配置調査では,大学や各種研究機関ごとにどの程度の印刷版雑誌や電子ジャーナルを導入しているかの量的な把握に努めたが,それら資源の重複状況や利用など,日本全体としての情報資源の整備状況の質については踏み込むことができなかった。本年度は,国立情報学研究所(以下,NII)のご厚意によりNACSIS-CATの雑誌所蔵データを提供頂いたことで,大学図書館を中心とする学術図書館群及びNDLとの雑誌所蔵の重複状況を加味した,日本全体の学術情報提供状況を把握することが可能となった。そこで,外国雑誌を対象として,学術図書館群とNDLがそれぞれどの程度の提供率を維持しているのか,重複状況はどうか,電子化による今後の影響をどう見るべきかを本章では論じる。

 以下,2.2節では調査の方法・使用したデータを示した。2.3節では外国学術雑誌全体に対して日本国内でどれだけの雑誌を提供できているか,NACSIS-CATとNDLの所蔵がどの程度重複しているかを1980年から25年間の変化として示す。2.4節ではDDC及びJCRのカテゴリに基づいた主題別の提供率を示した。2.5節は電子ジャーナル版の有無による,印刷版雑誌の提供状況の違いを分析した。

 

2.2. 外国学術雑誌供給状況調査の方法

 1999年に増田ほかは,Ulrich’s International Directory of Periodicalsの掲載誌のうち抄録・索引誌に掲載されているものを学術雑誌全体と仮定し,NDL所蔵雑誌,NACSIS-CAT収録雑誌,科学技術振興機構(以下,JST)収集雑誌に対する自給率調査を行った(未公表)。今回はJSTを除いた二者に対する同様の調査を実施する。NIIの協力により,2004年10月現在のNACSIS-CAT収録雑誌書誌レコード(275,522件),同 所蔵レコード(4,046,642件)を得た。また,2004年9月現在のNDLの外国雑誌所蔵レコード(38,901件)をNDLの所蔵状況を示す基礎資料とする。またUlrich’s International Directory of Periodicalsの掲載誌を抽出するためには,同誌のCD-ROM版であるUlrich’s on DISC(2003/Fall)(以下,Ulrich’s)を使用した。

 増田らはUlrich’sにおいて継続刊行中とされた雑誌のうち抄録・索引誌収録雑誌(当時39,916誌)を学術雑誌と定義した上で,ISSNが付与された38,248誌をマッチングの対象とした。今回は,過去25年間の動向を含めて集計するので,刊行状態の如何を問わない全抄録・索引誌収録雑誌(76,325誌)から,Academic/ScholarlyのDocument Typeを持つ31,612誌に絞り込んで照合を行った。この時,ISSNが付与されていない雑誌数は2,000誌弱であるので,ISSNによる照合のみでも大勢に影響しないように思えるが,実際にはNACSIS-CATの書誌レコードでISSNが付与されていないものが7割近い(68.2%)ため,ISSNだけの照合では相当数が照合漏れになる恐れがある。そこで,LCCNを併用して照合するとともに,誌名の完全一致による照合の必要性・可能性を検討した。

 
表2.1 照合に使用したデータ概要
摘 要 レコード数
Ulrich’s on DISC 2003 Fallの総収録誌数 235,199
うち抄録・索引誌収録雑誌数 76,325
 うちAcademic/Scholarly属性 31,612
  うちISSNあり 29,691
NACSIS-CAT書誌レコード数 275,522
 うちISSNあり 87,662
NDL所蔵外国雑誌レコード数 38,901
 うちISSNあり 25,940
 

ISSNによる照合結果

 Ulrich’sでISSNが付与されている29,691誌を対象にISSN及びLCCNを用いて照合した結果,NACSIS-CATで18,719誌(63.0%),NDLでは7,989誌(26.9%)が照合された。両者の重複を除くと全体で19,528誌(65.8%)が照合できた。

 

誌名による照合の検討

 誌名の一致にはNACSIS-CATのTRとOTの両方のフィールドを用い,5レコード以上で重複がある誌名は検索の対象としなかった。検証のためにISSNで一致した18,719誌に対して照合を行うと,7,368誌(39.4%)を正しく識別,1,124誌(6.0%)を誤識別,2,374誌(12.7%)が複数レコードと一致,7,853誌(41.9%)を見逃した。単一レコードへの一致8,492誌中の誤識別率が13.2%であったので,やや信頼性に欠けると判断し,本稿では誌名による照合結果は用いないことにした。

 誌名による照合をあきらめた影響は,概ね以下の程度であると考えられる。Ulrich’sでISSNが付与されながらISSN等で照合できなかった10,163誌との照合では,622誌(6.1%)が単一レコードに一致,249誌(2.5%)が2つ以上のレコードに一致した。見逃しと誤識別の割合が前段と同程度であると仮定すると,10,163誌中に1,400誌程度は本来照合されるべきレコードがあると思われる。Ulrich’sでISSNが付与されていない1,921誌について同様に照合すると,189誌(9.8%)が単一レコードと一致,60誌(3.1%)が2つ以上のレコードと一致した。先と同様に仮定すると1,921誌中に350誌程度は本来照合されるべきレコードがあると思われる。結局のところ,ISSN/LCCNのみによる照合の結果として,1,700誌程度の見逃しが発生し,本報告で示す提供率は7〜8%程度の過少推定になると思われる。

 

所蔵の確認方法

 Ulrich’sでISSNを持つ29,691誌について,以下の方法で1980年から2004年までの25年間の国内所蔵状況を集計した。最初に,NACSIS-CATについては4,046,642件の所蔵レコードから,ISSN/LCCNで照合できた18,719誌に関する540,857レコードの所蔵年月次(HLYR)フィールドの先頭年と最終年を検出し,その間の欠号の有無にかかわらず,先頭年から最終年までを連続して所蔵していると見なした。HLYRに一時休止期間を挟んで複数の期間が記載されているとき(1980-1982;1985-2000のように)は,その一時休止期間は所蔵なしとした。また,最終年が2002年以降で受け入れ継続(INTIND)フィールドが継続中であるものは,最終年から2004年までも所蔵していると見なした。HLYRフィールドに記載のない1,118レコードと所在地が日本国外の215レコードは集計から除外し,539,524の所蔵レコードを集計対象とした。

 NDLについては,所蔵レコードのholdingsフィールドから,同様に各年の所蔵の有無を確認した。NACSIS-CATと同様に一時休止期間を正しく反映した集計を行っている。

 

集計対象誌の発行状況

 集計対象期間各年の発行状況はUlrich’sのyear first publishedフィールドから確認した。同フィールドは通常は出版開始年だけが,刊行中止になった雑誌は開始年−中止年が掲載されている。中止年が不定の(単に中止年にceasedあるいはsuspendedとのみ表記されている,または199?などと記載されているもの)549誌のうち,NACSIS-CATあるいはNDLで所蔵が確認された234誌は,最後の所蔵年を中止年と仮定した。所蔵が確認できなかった315誌は集計から除外した。また,Publication StatusがAnnounced Never Publishedの4誌も集計から除外した。開始年が不詳の901誌は1980年時点で既に刊行中と仮定した。ここから,さらに日本国内発行の955誌を除き,最終的な集計対象は28,417誌となった。集計対象誌のPublication Statusは表2.2のようになる。また,1980年から2004年までの各年の刊行中雑誌数の変化は図2.1のようである。18,175誌から始まり,徐々に増加率を減じながら1990年代後半にほぼ増加が止まり,2002年の27,008誌をピークに減少に転じている。

 
表2.2 Publication Status
  度 数 相対度数
Active 26,114 91.9%
Ceased 1,455 5.1%
Merged/Incorporated 203 0.7%
Researched/Unresolved 185 0.7%
Address Unverified 153 0.5%
Postal Return 129 0.5%
Suspended 103 0.4%
Research Pending 75 0.3%
合計 28,417 100.0%
 

図2.1 年度別学術雑誌発行数の変化
図2.1 年度別学術雑誌発行数の変化

 

主題別集計

 主題による所蔵状況の相違を確認するため,Ulrich’sにおいて付与されているDewey10進コードの先頭2桁を単位に,主題別集計を行った。1誌に対して複数(最大4つまで)のコードが付与されているため,延べ31,865タイトルに対する集計となる。分類細目ごとの雑誌数を表2.3に示す。

 

表2.3 DDCによる集計対象雑誌数
表2.3 DDCによる集計対象雑誌数

 

2.3. 所蔵状況の変化 1980〜2004

 NACSIS-CATの所蔵レコードをもとに,1980年から2004年までの所蔵状況を集計すると,図2.2のようになる。7,411誌から年率4%程度の増加を続けるが,1990年代後半に頭打ちとなり,1998年の13,763誌を最大値として減少に転じた。所蔵レコードの更新頻度の問題で,直近数年の所蔵は不確かな状態ではあるが,p.10で述べたように2002年以降に受け入れ継続状態にあるものを現時点まで受け入れが継続しているとすると,12,500誌程度の受け入れと推定できる(図 実線部)。

 受け入れ継続フラグがあっても翌年には全ての購読が中止されたと仮定すると図下側の点線の,受け入れ継続フラグがあればどんなに古い所蔵レコードでも現時点まで継続が更新されていると仮定すると図上側の点線のような推移を描くが,実際の所蔵種類数はこの間にあると見ることができる。1990年代後半からの傾向の変化を考えると,2000年代前半は1990年代後半から若干減じて13,000誌弱程度の所蔵(受け入れ)と見なすのが妥当と思われる。

 一方,NDLの所蔵は1980年の3,957誌から徐々に増加して1995年に5,703誌で最大値に達する。1997年から1998年にかけての1,000誌を超える減少を経て,2000年に最小値の3,834誌となるが,そこから徐々に回復して2004年は4,024誌(1995年の70.6%の水準)まで戻している。NACSIS-CATとNDLを合わせた,国内所蔵種類数は,1996年の14,412誌を頂点に減少を続け,2004年には13,000誌強程度と考えられよう(図2.3)。

 
図2.2 NACSIS-CAT収録学術雑誌の種類数
図2.2 NACSIS-CAT収録学術雑誌の種類数
図2.3 国内所蔵学術雑誌の種類数
図2.3 国内所蔵学術雑誌の種類数
 

 Ulrich’sによる刊行雑誌数との比として国内供給率を定義すると,1995年までの雑誌数増加率が刊行種類数の増加率を上回っていたため,国内供給率は1980年の46.0%から1995年の54.9%まで増加するが,ここで単調な減少に転じて2004年には50%を割るところまで落ちている(図2.4)。NDL単独で見ると,1983年の24.5%を最大値に,1980年代後半から1990年代前半は緩やかな減少を続けていた。1990年代後半の大規模な削減で2000年には14.2%まで下がるが,その後の増加で2004年になって15%を回復した。

 NACSIS-CATとNDLの重複状況に注目すると,1980年代には75%前後であった重複率(NDL所蔵中の重複誌の比率と定義)が徐々に増加し,1990年代後半のNACSIS-CATの受け入れ増,その直後のNDLでの大幅な受け入れ縮小で90%まで急増した。NDLの雑誌数回復とともに重複はやや弱まっているが2004年時点で86.7%である。

 すなわち,日本全体では1990年代後半に供給率の低下が始まるが,NDLはそれ以前の1980年代後半から既に供給率低下が続いており,かつて単一機関だけで外国学術雑誌全体の25%弱を供給していたが,現在では15%程度まで低下している。日本全体の供給率については,1995年から2000年にかけてのNDLの所蔵減,2000年前後から始まったNACSIS-CATの所蔵減が供給率悪化の直接要因となっていることに加えて,質的には1995年から2000年にかけてNDLとNACSIS-CATの重複率が上昇しており,両者の重複の増加が供給率低下に拍車をかけていると言えよう。

 

図2.4 国内供給率の変化とNACSIS-CAT/NDLの重複
図2.4 国内供給率の変化とNACSIS-CAT/NDLの重複

 

2.4. 主題別の所蔵状況

 次に,主題領域ごとの学術情報の提供状況の差異,政策的重点領域に対する提供状況の検討のため,DDC(表2.4〜2.6)及びJCR(表2.7〜2.10)による主題分類別の提供状況を集計した。DDCは上2桁でまとめた100分類を,JCRはJCRやScience Citation Indexで用いられる170分類を集計の単位とした。

 JCRによる分類のために,Journal Citation Report 2003 Science Editionに掲載されている5,907誌とUlrich’sの28,417誌とのISSNによる照合を行った。その結果,5,267誌が照合され,2004年にはそのうち4,929誌(93.6%)が国内で供給されていることがわかった。3つの主題で供給率が100%を超えているが,いずれも2002年ないし2003年に刊行中止となった雑誌に対してNACSIS-CATで受け入れ継続中フラグから所蔵と判定したケースである。

 JCRの掲載誌は概ねコアジャーナルと位置づけることができようが,NACSIS-CATの所蔵状況は(「Biodiversity Conservation」「Ornithology」「Multidisciplinary Science」の3分類を除くと)どの主題でも70%を超える供給率を示し,32分類では100%を示している。NDLは単一機関の集計であることから0%から83.8%までの大きな開きが生じている。供給率が70%を超える分野は「Agricultural Economics & Policy」「Substance Abuse」「Polymer Science」「Physics, Particles & Fields」「Engineering, Electrical & Electronic」「Physics, Condensed Matter」「Transportation Science & Technology」「Engineering, Aerospace」の8分野,15%を下回る分野は「Medical Ethics」「Emergency Medicine」「Limnology」「Nursing」「Orthopedics」「Ornithology」の6分野である。

 

表2.4〜2.6 主題別雑誌供給率(1980年,2004年)
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表2.4 主題別雑誌供給率(1980年,2004年)(1/3) 表2.5 主題別雑誌供給率(1980年,2004年)(2/3) 表2.6 主題別雑誌供給率(1980年,2004年)(3/3)

 

表2.7〜2.10 JCRカテゴリ別雑誌供給率
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表2.7 JCRカテゴリ別雑誌供給率(1/4) 表2.8 JCRカテゴリ別雑誌供給率(2/4) 表2.9 JCRカテゴリ別雑誌供給率(3/4) 表2.10 JCRカテゴリ別雑誌供給率(4/4)

 

2.5. 電子ジャーナルの利用可能性と所蔵状況への影響

 電子ジャーナルとして提供されていることが,印刷版の所蔵にどのような影響を与えるかを検討するために,Ulrich’sにおいて2003年時点で刊行中(Publication StatusがActive)の雑誌の中で,電子ジャーナルとして提供されている(Online AvailabilityでAlso available onlineまたはAvailable online only)雑誌とそうでない雑誌の,1980年から2004年の所蔵状況をまとめた。ただし,2003年までのどの時点で電子ジャーナル化されたかはわからない。

 図2.5に示すように,外国学術雑誌全体としては電子版あり群(点線)と印刷版のみ群(実線)の増加の傾向に顕著な相違はなく,電子版あり群の増加率がやや低いぐらいの差しか見られない。ところが,日本国内の所蔵状況に目を転ずると,図2.6に示すように2つの特徴が観察できる。1つは出版点数(図2.5)としては全期間を通じて印刷版のみ群が電子版あり群よりも2倍以上の規模であるにもかかわらず,NDLにおいては電子版あり群の雑誌数が印刷版のみ群よりも一貫して多い上,その差が徐々に大きくなっていること。もう1つは,NACSIS-CATにおいて電子版あり群がほぼ一貫して増加している一方で,1995年以降に印刷版のみ群が急激に減少を始めていること。両者の結果として,この数年では日本全体としては電子版あり群と印刷版のみ群の規模がほぼ拮抗している。

 1980年の時点で電子化されていることはないので,NDLの特徴は電子化の有無とは無関係と見るべきであろう。電子化の有無が代理変数となるような雑誌の何らかの特性(おそらくはコアジャーナル的な性格の強さ。JCR掲載誌の66.5%が電子版あり群だが,非掲載誌の80.1%が印刷版のみ群に属している)に対するNDLの雑誌収集方針上の選好を示唆しており,その傾向は一貫して強まりつつある。NACSIS-CATの所蔵数が示した特徴については,国内において1995年時点で電子化の有無が雑誌の購読に大きな影響を与えたとは考えにくく,やはりこれもコアジャーナルでない雑誌の購読中止が1995年を境に進行していると見るべきであろう。電子化の影響は,国内においても電子ジャーナルの導入が進んだ2000年以降に現れるはずであるが,今回のデータの範囲では,期間が短く,NACSIS-CATの更新遅れの影響もあり,数字には何も現れていない。

 今後,起こりうるシナリオとしては,印刷版の購読中止ができないあるいは不利になる電子ジャーナル特有の価格制度のために,短期的には購読中止が印刷版のみ群で集中的に進行して,従来以上に印刷版のみ群の減少が進むことが考えられる。電子化環境下においては,逆説的ではあるが,電子化されないような印刷版雑誌の収集・供給をいかに維持していくかも大きな問題であろう。中長期的には,電子版あり群において電子版への完全切り替えが起こり,電子版あり群においても電子ジャーナルの購読のみで済ませて,印刷版に関して購読中止が始まる可能性もある。国全体の学術情報の保存という観点で,電子ジャーナルのアーカイビングの必要性は誰もが認めるところではあるが,電子ジャーナルをアーカイブした上で,さらにその印刷版を保存するという選択も検討の余地があろう。

 
図2.5 電子版の有無別総雑誌数の推移
図2.5 電子版の有無別総雑誌数の推移
図2.6 電子版の有無による国内所蔵状況の相違
図2.6 電子版の有無による国内所蔵状況の相違
 

2.6. まとめ

 Ulrich’s及びNACSIS-CATの所蔵レコード等を用いて,外国学術雑誌全体に対して,日本国内でどれだけの割合を提供できているか,その中でNDLはどの程度の役割を果たしているのかを,1980年から2004年までの25年間の時系列変化とともに検討した結果,以下の結論を得た。

(1)大学図書館等の所蔵データからは,1995年ごろを境に外国雑誌の供給率が減少に転じたことが示された。この減少は主として印刷版のみの雑誌群において起きているものであり,コアジャーナルでない雑誌の購読中止が供給率を引き下げていることを示唆している。

(2)NDLの所蔵データからは,既に1980年代の前半からNDLでは外国雑誌の供給率が減少を続けていること,1995年から2000年にかけての大幅な削減を経て,わずかに回復傾向が見られることが示された。NDLは雑誌数の減少によって結果的にはコアジャーナルへの傾斜を徐々に強めており,大学図書館等での同様の傾向と相まって,収集雑誌中の大学図書館等に対する重複率は80%台の後半まで上昇している。

(3)日本全体としてはNDLによる1995年からの急減,2000年前後からの大学図書館等での減少により,1995年以降継続的に供給率が下がっている。重複率の増加に示される大学・NDL双方のコアジャーナルへの傾斜傾向は,雑誌数の減少率以上に国全体としての供給率を下げる効果を発揮している。

(4)大学図書館が大学コミュニティ以外には十分開放されていない中で,NDLは国会,大学に属さない研究者,NPO等の諸団体・市民など幅広いコミュニティを対象として,学術情報の提供を果たさなければならない。しかしながら,近年わずかに回復したとはいえ,1980年代前半以来ほぼ一貫して外国雑誌の供給率が低下しており,これらコミュニティへの情報提供の質を維持するためには何らかの打開策が必要である。

(5)雑誌の所蔵に関して,電子化の効果は現時点では明確には現れていない。ただし,印刷版のみの雑誌の減少が進行しており,資料費の制約や雑誌価格の高騰などで,今後も雑誌の購読中止が進むとすれば,電子ジャーナルとの関係において契約上の制約が少ない印刷版のみの雑誌の提供率が従来以上に低下する危険性がある。また,電子版への完全切り替えによって,電子ジャーナルのある印刷版雑誌の購読中止が一気に進行する可能性も否定できない。電子化の中で印刷版雑誌の購読維持や保存について,大学図書館やNDL等の各機関間で役割分担を明確化していくことが求められよう。