E794 – 公共図書館による専門サービス提供の実情(英国)

カレントアウェアネス-E

No.129 2008.06.11

 

 E794

公共図書館による専門サービス提供の実情(英国)

 

 財政難による図書館の閉鎖やサービス縮小,スタッフ削減に直面している英国の公共図書館事情を改善するべく,英国図書館情報専門家協会(CILIP)は,2008年1月,4つの行動指針に基づくアドヴォカシー・キャンペーン(E753参照)に着手した。このほど,4つの行動指針のうちの1つ,公共図書館の危機をCILIPに訴えている地方政府の現状視察の成果が報告書としてまとめられた。なお現状視察とその報告書の作成は,CILIPから委託を受けたコンウェイ(Patrick Conway;元ダーラム州議会文化・レジャー部門責任者)氏が担当した。

 今回視察の対象となったのは,カンブリア州,ドーセット州,グロスターシャー州など全10州で,実際に視察を受け入れたのは,8州であった。コンウェイ氏は,包括的業績評価制度(CPA;CA1568E360参照)で用いられている指標と,公共図書館および博物館法(Public Libraries and Museums Act 1964)が定めている図書館の専門サービスの2つを用いて,専門性基準を満たす図書館サービスが地域の人々に提供されているかどうかについて,インタビューや情報収集で得たデータを基に評価をしている。その結果,予算削減,図書館の閉鎖,図書館経営の地域コミュニティへの移管を経た現在でも,専門性基準を満たす図書館サービスを提供していると判定された自治体が10州のうち3州,サービスが不十分であると判定された自治体が4州,情報不足で判定困難とされた自治体が3州となった。

 報告書は,10州の評価データの分析からさらに,「外部評価」「予算の優先順位」「知識・スキル・コンピテンシー」といったテーマについて,より普遍的な視点から検討を加えている。

 「この報告書は少数の事例に基づいているものの,英国の公共図書館が抱える重要な問題を提起している。今求められているのは,全国の状況を把握するための,政府による更なる調査である」と,この報告書の作成を補佐した運営グループの議長であるモロイ(Martin Molloy)氏は指摘する。本報告書で確認された論点は,検討課題として政府に持ち込まれる予定だという。今後英国において,公共図書館をめぐる情勢がどのような展開を見せるのか,引き続き注目していきたい。

Ref:
http://www.cilip.org.uk/aboutcilip/newsandpressreleases/news080528.htm
http://www.cilip.org.uk/policyadvocacy/statements/conwayreport/conwayreport.htm
http://www.cilip.org.uk/policyadvocacy/statements/conwayreport/conway_appendices.htm
CA1383
CA1475
CA1568
E264
E313
E360
E753