カレントアウェアネス-E
No.123 2008.02.20
E753
「図書館の専門性の危機」に対しCILIPが取る対策とは?(英国)
英国でも,財政難を理由にして図書館の閉鎖やサービスの縮小,スタッフの削減,さらには図書館資産・図書館活動の地元コミュニティへの移管などを,公共図書館に提案している地方自治体がある。このような地方自治体に属する公共図書館の職員から寄せられた,「専門性の解体(de-professionalisation)」を危惧する声を受けて,図書館情報専門家協会(CILIP)の理事会は,4つの行動指針に基づくアドヴォカシー・キャンペーン(CA1646参照)を取ることを決定した。この内容を,CILIPの機関誌“Update”の2008年1/2月号で,CILIP事務局長が説明している。
CILIPは,公共図書館の閉鎖,スタッフの削減,地元コミュニティへの移管がそれぞれ,図書館サービスへのアクセシビリティの低下,図書館サービスの質の低下,図書館サービスのアカウンタビリティ(説明責任)の低下をもたらすおそれがあると見る。CILIPはこの危機に対し,伝統的な概念としての「専門職」を擁護するという立場からではなく,公共の利益(publicinterest)を擁護するという立場から対応するという。
具体的には,以下の4点が行動指針として示されている。
- (1) 公共図書館サービスの「専門性」の基準を,公の合意を得たフレームワークという形で定義する。
- (2) 図書館職員全体の中でも,とりわけ図書館情報学を修めた専門職の減少が統計上も顕著であることをふまえ,現在の公共図書館サービスの各々とそれに必要なスキルを組み合わせて,サービスと関連した形で図書館情報学専門職の役割を定義する。
- (3) CILIPに危機を訴える手紙を寄せてくる公共図書館を管轄する地方政府に対し,CILIPの理事会のメンバーが実際に現地を訪れて,サービスの専門性の基準は何か,どのサービスが専門職によって担われなければならないか,代替案としてどのようなものがあるかなどを説明し,協同して問題の解決にあたる。
- (4) 文化・メディア・スポーツ省(DCMS)など中央政府機関との対話を続け,協同して問題の解決にあたる。
このアドヴォカシー・キャンペーンについては,今後もUpdate誌で進捗が報告される予定である。
Ref:
http://www.cilip.org.uk/NR/exeres/865560BD-CCFC-4299-8068-D7ECA3456192
CA1646