カレントアウェアネス-E
No.123 2008.02.20
E754
欧州大学協会,オープンアクセスに関する勧告を採択
欧州46か国の791大学が加盟する欧州大学協会(EUA)は,2007年1月に「オープンアクセスに関するワーキンググループ(以下,WGと略)」を設置し,「オープンアクセス」の重要性を大学に広く啓蒙するとともに,オープンアクセス問題に関する政策決定において,鍵を握る利害関係者である大学に向けた,共通の戦略構築の勧告の作成を進めてきた。2008年1月25日,WGが作成した「オープンアクセスに関する欧州大学協会からの勧告(Recommendations from the European University Association Working Group on Open Access)」はEUA評議会において,全会一致で採択された。
勧告ではまず,「公共善」としての研究知識(research knowledge)の保護者として,大学は責任と役割を果たすこと,資金援助を受けた研究成果は早期に公開されるべきこと,研究成果の品質を保証するピア・レビュー制度は,学術出版の大前提であり,デジタル学術出版方式においても根本的に維持されるべきこと,の3点を,勧告全体を貫く大前提として提示している。その上で(A)大学の運営陣,(B)各国の大学長会議,(C)EUA,の3者に向けて,それぞれ詳細な勧告を行なっている。
(A)では,OAI-PMHプロトコル(CA1513参照)に準拠した学術機関リポジトリを創設し,相互運用性の確保と,将来的には幅広い利用に向けたネットワーク化を勧告している。その他にも可視性,アクセシビリティ,学術的インパクトを最大限にするために,大学が学内のポリシーと戦略を構築すべきこと,学内のポリシーにおいて知的財産権管理規定に著作権を含むべきであること,学内の教員・研究者に対し知的財産権・著作権管理の知識を伝達すること,著者支払いモデルによるオープンアクセス誌を創刊することに備えて,どの程度の出版費用負担が求められるのか調査すべきであること,などを勧告している。
また(B)では,各国の研究助成機関や政府と協調して,学術機関リポジトリ,またはふさわしいオープンアクセスリポジトリに,研究者自身が学術研究成果をセルフ・アーカイビングしていくための要件を,欧州研究会議や各国の既存の研究助成機関の優良事例を参考にして,取りまとめるべきであると指摘する。同様に(C)では,欧州連合(EU)の研究プログラムや研究プロジェクトの助成を受けた全ての研究成果について,セルフ・アーカイブの義務化を目指して,欧州レベルにおけるオープンアクセスに関する政策文書作成に向けた政策対話活動を,引き続き推進すべきであるとしている。
Ref:
https://mx2.arl.org/Lists/SPARC-OAForum/Message/4180.html