カレントアウェアネス-E
No.123 2008.02.20
E755
中国国家図書館がサービス向上への取り組みを発表
中国国家図書館(NLC)はこのほど,「国民の基本的な文化的権益を保障する」という中国共産党第17回全国代表大会の精神を実現するため,政府の財政支援を得て2008年2月7日から利用者サービスに係る料金を全面的に値下げする,と発表した。加えて,デジタル資源の無料提供,立法および政策立案サービスの充実,図書館が開催する文化講座の拡大,図書館界へのサービスのより一層の充実など,あわせて7項目の取り組みを示した。
料金に関しては,利用者カードの発行費と毎年の更新費,手荷物預かり料金,自習室の利用料金,NLCが主催する文化講座の入場料金を無料にし,身分証があれば入館,資料の閲覧ができるようにした。また複写料金,文献提供料金,検索料金,CD-ROMへの記録料金も大幅に値下げした。複写料金は,例えばA4判1ページあたり0.3元(約4円)から0.2元(約3円)へと約30%引き下げられ,文献の検索料金も1件あたり5元(約75円)から2元(約30円)へ,CD-ROMへの記録料金は1枚10元(約150円)から5元(約75円)へ変更された。さらに,身体障害者のインターネット利用料金を無料にするとともに, 聴覚障害者や視覚障害者が支障なくNLCの資源を利用できるようなインターフェースを提供する予定であるという。
デジタル資源の無料提供に関しては,NLCは現在インターネット上で72万点,館内では100万点以上の電子図書を提供しているが,2008年からは電子図書を毎年1万点以上購入し,これらのデジタル資源を国家デジタル図書館(CA1640参照)と全国文化情報資源共有プロジェクト(CA1601参照)のプラットフォームを通じて,全国各レベルの基層センターに送信し,サービスを提供する予定であるとされている。
政府はNLCのサービスを公益性の高い事業として財政的に支援している。2002年以降,NLCの図書購入費は毎年1億元(約15億円)以上を維持し,さらに年々増加している。2005年の国家図書館二期工事および国家デジタル図書館プロジェクトにはあわせて12億2,300万元(約183億円),一期館の改修プロジェクトには1億7,000万元(約25億円)が投じられた。
このようなNLCの取り組みのほかにも,中国ではいくつかの図書館でサービス料金の引き下げが実施・予定されている。例えば,浙江図書館では2007年12月から貸出の年会費30元(約450円)を無料に,北京市の24の公共図書館では2008年2月6日から利用者カード発行費10元(約150円)を無料にした。また江蘇省では三大文化施設の南京図書館,南京博物院,江蘇省美術館が2008年4月までに無料公開することになっているほか,他の300余りの図書館,博物館,美術館も徐々に無料公開していく予定であると報道されている。NLCや他の図書館・文化施設による,地域や階層を越えた情報格差の是正に向けた取り組みが注目される。
Ref:
http://www.nlc.gov.cn/GB/channel55/59/200802/04/5291.html
http://www.nlc.gov.cn/GB/channel96/200802/01/5282.html
http://www.nlc.gov.cn/GB/channel55/58/200802/01/5274.html
http://www.zjlib.net.cn/shownews.asp?id=1061
http://news.xinhuanet.com/edu/2008-02/07/content_7579387.htm
http://culture.people.com.cn/GB/87423/6778990.html
CA1601
CA1640