カレントアウェアネス-E
No.89 2006.08.23
E528
北アイルランドの公共図書館拡充政策
英国北アイルランドの文化・芸術・レジャー省(DCAL)は,2001年から公共図書館サービスの将来像を描く枠組みを作成している。DCALは2002年の段階で,当時の図書館の現状と将来像をレビューした報告書を作成したものの,この報告書に寄せられた意見なども取り込む必要があるとして,2005年,新たな策提案書を作成し,意見募集を行っていた。そして2006年7月,意見募集に応じた1千を超える個人・機関からの意見を踏まえ,公共図書館サービスのための政策ガイドライン“Delivering Tomorrow’s Libraries”が発表された。
この中でDCALは,図書館は(1)生涯学習,(2)社会的不平等の解消,(3)情報に通じた責任ある市民の育成,(4)コミュニティの構築と良好な近隣関係の促進,(5)創造性の奨励,の5点で,コミュニティに貢献できる能力を有しているとしている。そして,「コミュニティの活力ある中心となり,人々の可能性を発揮させる支援を行う,柔軟で変化に即応できる図書館サービス」をビジョンとして掲げている。このビジョンのもと,単一の図書館設置母体による統合的なサービスが,2008年4月に確立される予定である。
またDCALは,図書館職員,アクセシビリティ,蔵書,特に重点的にサービスすべき利用者(ヤングアダルト,授業や宿題の支援が必要な子ども,リテラシーの基本スキルが不足している人,英語が母語でない人),関連機関との協同,地域レベルでの活動,マーケティング・広報の各項目について行動指針を定めている。さらに,これらの活動を評価するための基準として,以下のような目標が掲げられている。
- スタッフ・図書館への満足度を95%にする。
- 2マイル(約3.2km)以内に図書館がある家庭を85%にする。
- 2008年までに北アイルランド全体の人口の45%を図書館利用者にする。
- 利用者がアクセスできる公共のPCの利用時間を毎年1%ずつ増加させる。
- 2006/2007年の住民一人当たりの資料購入費を1.5ポンド(約320円)とし,これを毎年0.5ポンド(約110円)ずつ増加させ,最終的には3ポンド(約650円)に引き上げる。
このような取り組みは,英国の国家レベルの公共図書館政策(CA1475,E264,CA1568参照)の流れに沿いつつも,北アイルランド固有の状況に即して具体化されている。図書館への人々の期待も高いことから,これからの進展が大いに期待される。
Ref:
http://www.dcalni.gov.uk/newsStory/default.asp?id=1291
http://www.dcalni.gov.uk/Contman/includes/upload/file.asp?ContentID=1291&file=c_24
http://www.dcalni.gov.uk/newsStory/default.asp?id=1262
CA1475
E264
CA1568