カレントアウェアネス-E
No.63 2005.08.03
E360
英国公共図書館はコミュニティに貢献しているか?
7月4日,英国のレイザー財団は,図書館が地域コミュニティに対してどの程度貢献しているのかを調査するインパクト測定(impact measures)についての報告書“Libraries Impact Project”を公開した。
英国ではすでに,文化・メディア・スポーツ省(DCMS)による公共図書館の全国基準に基づく評価制度(CA1475,E313参照),またより大きな文脈では,地方自治体の業績を評価し監査することで業務改善を目ざす包括的業績評価制度(Comprehensive Performance Assessment: CPA)が実施されている。Libraries Impact Projectは,このような政府による評価に対し,図書館が社会に貢献していることをしっかりとしたデータで示し意義をアピールするため,またそのデータに基づきさらなるサービス改善に取り組めるような枠組みを作るため,DCMSや博物館・図書館・文書館国家評議会(MLA)もキーパートナーとして取り込みながら実施された。
このプロジェクトでは最初に,全国基準やCPAを含む既存の政策や戦略,報告書等,さらには海外の類例等を丹念に検討し,政府および地方自治体が優先的に取り組むべき課題と見なしているうちの4つ−教育,子ども,健康,高齢者−について,政策にとって重要で図書館サービスの影響を受けそうな指標を選び出した。例えば教育領域では,義務教育を終えた16歳以上の人々に対する成人教育の支援と,生徒に対する夏の読書や宿題の支援が指標として選ばれている。次に,全国7つの公共図書館を選び,各館に4領域のうちの1つを割り当て,その領域の指標に関連する図書館サービスの質的・量的データを採取した。最後に,このデータを分析し,各指標ごとに,何をどのように調査すればインパクトを測定できるのかという方法論を導き出した。
この結果から,公共図書館は地方と国家双方のレベルで,これらの優先課題に対して持続的かつ有意義な貢献を行っていることが明らかになったという。またこの結果をDCMSやMLAなどの評価基準や評価対象にフィードバックするよう,提言も行っている。
Ref:
http://www.bl.uk/about/cooperation/pdf/laserfinal6.pdf
http://www.libplans.ws/default.asp
http://www.jbaudit.go.jp/kanren/gar/japanese/jartcl21to30/j29d11.pdf
CA1475
E313