E983 – 図書館ウェブサイトを「デジタル分館」にするには<文献紹介>

カレントアウェアネス-E

No.159 2009.10.14

 

 E983

図書館ウェブサイトを「デジタル分館」にするには<文献紹介>

 

King, David Lee. Building the Digital Branch: Guidelines for Transforming Your Library Website. Library Technology Report. 2009, 45(6), p.5-38.

 この文献は,米国カンザス州の公共図書館で「デジタル分館・サービス」部門を担当するキング氏が,自身の経験を踏まえ,図書館の「デジタル分館」を構築するためのアドバイス等をまとめたものである。「デジタル分館」は,ウェブ上で提供されるものではあるが,通常のウェブサイトと異なり,実際の図書館のように固有のスタッフ,コレクション,コミュニティを持つものであるとしている。以下に,キング氏による提言内容を構成に沿って紹介する。

 「デジタル分館」構築の第一の手順は情報収集である。組織上のフォーマルなリーダーに図書館の目標や戦略を聞くだけでなく,インフォーマルなリーダー(ベテラン職員や図書館活動に積極的な住民等)の意見や,現場で利用者と接するスタッフの意見も聞くことが大事である。利用者のニーズについては,面談やアンケートに加え,実際の利用行動の観察による情報収集をするのもよい。

 集めた情報を基に計画を策定する段階では,委員会を作ってなるべく多くの人に関与してもらうことで,作業負担が減るだけでなく,計画への反対者を抑える効果も得られる。また,上司に計画を説明し,方向性等について上司が自分で決定するような形で承認を得ておくことが大切である。

 実際の構築にあたっては,CMS(コンテンツ・マネジメント・システム;CA1584参照)を利用したシステムにすると,コンテンツの追加作業が容易となる。注意点として,作業には締切が必要であり,締切がないと,焦点がぼやけたり,完璧主義になって他の仕事に労力が回せなくなったりする危険性がある。構築作業は専門家に頼むのが確実であるが,それが予算上難しい場合には,なるべく少数の職員に集中して権限を与えるのがよい。

 こうして完成した「デジタル分館」には,維持・管理が欠かせない。コンテンツの追加は図書館資料を購入するのと同じで,継続しなければ情報が古くなり,やがて利用されなくなってしまう。追加するコンテンツとしては,職員自身が使うための新しいレファレンスツールや自身の担当分野の新着情報等であれば,職員と利用者が情報を共有するという目的に合致する。「デジタル分館」の目的がコミュニティとつながることである以上,情報の追加は,優先事項として取り組むべきことである。

 また,常に「デジタル分館」のサイトを宣伝することが大事であり,各種のソーシャルネットワーキングサイト(SNS)の活用や,検索エンジンでの見つけやすさ等も考慮すべきである。ブログやTwitter等は,利用者とのコミュニティ形成にも有用なツールである。利用者の参加を促す方法としては,まず人々の意見をウェブ上で集め,それに対応するようなコンテンツを掲載することが考えられる。

 まとめにあたってキング氏は,自身の図書館でのこれからの計画を述べている。その一つとして,図書館の最大の資産は図書館員であり,それをもっとアピールすべきであることをあげており,それを実現するために,オンライン動画やSNS等を活用し,「デジタル分館」で「生身の」人間を感じさせることが大切であるとしている。

Ref:
http://alatechsource.metapress.com/content/x44974x20578/
CA1584