E943 – 携帯電話向け図書館サービスのニーズ調査(英)

カレントアウェアネス-E

No.153 2009.07.08

 

 E943

携帯電話向け図書館サービスのニーズ調査(英)

 

 英国のケンブリッジ大学図書館では,Arcadiaファンドの資金提供のもと,デジタル時代の研究図書館の役割について探求するArcadiaプログラムが進行中である。この一環として,携帯電話や携帯情報端末によって移動しながらでも利用できる図書館サービス“m-libraries”の可能性を探ることを目的に,ケンブリッジ大学及びオープン大学(Open University;遠隔教育を中心とする英国唯一の大学)の学生を対象としたニーズ調査が実施され,このほどその報告が公表された。

 調査はオンラインで実施され,ケンブリッジ大学とオープン大学の学生等に対し,携帯電話での情報サービスやインターネットの利用状況等を尋ねた。報告では,調査結果に加え,結果を踏まえて考えられうるm-librariesについて提案も行っている。

 調査結果から,回答者の多くが携帯電話用インターネットよりむしろSMS(ショートメッセージサービス)を通じて情報にアクセスしていること,回答者の大多数の携帯電話の使用目的は,電話,テキストメッセージの送信,写真撮影であること,アップル社のiPhoneのユーザは,携帯電話で電子書籍を読むことにすでに心を傾け始めている,といった傾向が確認された。また携帯電話で音楽を聞いたり,ビデオを見たりする人はいたが,ポッドキャストやオーディオブックを聞いたり,電子書籍や電子ジャーナルを読んだりする人は回答者の中にはほとんどいなかったという。この点に関して回答者からは,ポッドキャストや電子書籍のようなメディアを利用する際には,iPodなどの他のメディアプレーヤーを使うというコメントがあった。こうした調査結果と,iPhoneに代表されるスマートフォンの普及による携帯電話でのインターネット利用の変化の可能性などを踏まえ,報告は高等教育機関の図書館に対し,下記のような提案をしている。

  • テキストメッセージや電子メールを用いたアラートサービスの試行
  • テキストメッセージを用いた簡易レファレンスサービスの試行
  • 携帯電話用OPACの提供携帯電話等で利用可能で,小さなスクリーンにも対応できる図書館ウェブサイト
  • 携帯電話・MP3プレーヤー向けの図書館オーディオツアーの提供
  • 図書館での携帯電話利用の許可(マナーモードに限る)

 このうち携帯電話用OPACの開発や図書館内での携帯電話利用の許可の必要性については,OPACの検索結果画面を携帯電話のカメラで撮影している図書館利用者がいること,回答者の半数以上が,情報を保存するための写真撮影を行っていることなどから確認できるという。モバイル機器でも利用できる図書館ウェブサイトは,スマートフォンやネットブック(簡易PC)の利用者が拡大し,携帯情報端末からのインターネット利用者が増加する将来を勘案し,準備しておく必要があると報告は指摘している。

 携帯電話や携帯情報端末の高機能化,またそれに伴う利用者の情報行動の変化に対応して,図書館がどのようにサービスを充実させていくことができるのか,今後も引き続き検討していくべきトピックであろう。

Ref:
http://arcadiaproject.lib.cam.ac.uk/docs/M-Libraries_report.pdf
http://arcadiaproject.lib.cam.ac.uk/index.php
http://www.libraryjournal.com/article/CA6667421.html