カレントアウェアネス-E
No.149 2009.05.13
E921
図書館・書店等の団体が愛国者法の見直しをアピール(米国)
2001年に成立した米国愛国者法(USA PATRIOT Act)には,図書館・書店での利用記録等の収集を可能とする規定が含まれている(CA1547参照)が,この規定について2006年の法改正時に取られた4年間の延長措置(E462参照)が2009年末で期限切れとなるため,動向が注目されている。
こうした中,同法の見直しを求める「読者のプライバシーのためのキャンペーン(Campaign for Reader Privacy: CRP)」は,2009年4月7日に,米国連邦議会に宛てたアピール文を発表した。CRPは,米国図書館協会(ALA),米国書籍販売協会(ABA),米国出版社協会(AAP)及びPENクラブ米国センターの4団体が2004年に結成したもので,全国レベルでの啓蒙活動や署名運動等を行ってきた。今回のアピールでは,愛国者法によって損なわれた読者のプライバシー保護を回復させるべく,図書館の利用記録等を同法第215条の対象から外すこと等を改めて主張している。
第215条は「業務記録」の収集を可能にするもので,連邦捜査局(FBI)は,国際テロに関連があると思われる場合等に,大陪審の召喚令状なしに,図書館や書店にも記録等の提出を求めることができるとされている。また,これとは別に,インターネットへのアクセスを提供している図書館や書店は,通常の裁判所手続きなしに発行される「国家安全保障書簡」(National Security Letters: NSL)による協力要請の対象にもなっている。これらの両方の手法に,対象となった側からの公表禁止規定が設けられていることも,記録収集の実態が不透明になること等から問題視されている。
2006年の法改正時に,CRP等の働きかけもあり,第215条による記録収集について,手続きの厳格化,異議申し立ての権利,公表禁止期間の緩和等の措置が導入された。しかし,CRPは,「国際テロに関連」という定義があいまいであると批判し,さらなる改正を求めている。
第215条に基づく図書館等からの記録収集は,言論の自由等を定めた合衆国憲法修正第1条を脅かすものとの指摘もあり,改正法案も何度か連邦議会に提出されたが,これまでのところ成立には至っていない。CRPは「読書の自由は民主社会の礎石である」とし,図書館・書店を第215条の対象から外すことや,記録収集が必要な場合は大陪審の召喚令状等の他の手段を用いるようにすること等の改正が必要であると訴えている。
Ref:
http://www.readerprivacy.org/news.jsp?id=33
http://www.readerprivacy.org/news.jsp?id=34
http://www.libraryjournal.com/article/CA6650577.html
http://www.publishersweekly.com/article/CA6650189.html
CA1547
E462