カレントアウェアネス-E
No.143 2009.02.04
E886
メタデータ作成のワークフローの現状は?―OCLCの調査から
OCLCは2008年10月から11月にかけて,メタデータ作成の実態調査を実施した。作業の現状やベストプラクティスに関する情報共有を促進し,メタデータ作成のワークフローを合理化していくことが目的で,RLGプログラムのパートナー機関の非MARCメタデータ作成責任者を調査対象としている。
調査結果からは,下記のようなことが明らかになっている。
- メタデータ作成ツールは各機関で大幅にローカライズされており,ツールキットを使っているところは一つもなかった。
- MARCデータと非MARCメタデータの両方を作成しているという回答のうち3分の2が,同じスタッフが両方の作成を担当していると答えた。さらに,そのうちの80%が非MARCメタデータの作成は「ルーティンワーク」の一部となっていると答えている。
- 非MARCメタデータの作成がルーティン化しているにもかかわらず,メタデータ作成の方法をスタッフに教えるための研修プログラムを有しているとした回答は半数にも満たなかった。
- これから克服されていくべき主なハードルは,「資料を探している人は,ウェブではなく,まず最初にそれぞれの機関のウェブサイト,リポジトリ,目録を検索する」という想定である。
- 多くの機関が複数の方法でデータを公開していることが明らかになった。 公開方法のうち比較的高い割合を占めたのが,総合目録(63%),Google, Yahoo!,MSNなどのウェブクローラ(56%),OAI-PMH(48%)である。
- MARCデータ作成と非MARCメタデータ作成におけるスタッフ配置の違い(後者には,専門性の高い職員が携わっているものの,補助をするのがパートタイマーや学生であることなど)を考えると,非MARCメタデータ作成は実際のところ,ルーティン化しているとまでは言えないかもしれない。
- 非MARCメタデータには維持・更新のルーティン化した手順がないという回答が半数以上を占めた。
調査には自由記述回答も含まれていたが,メタデータ作成にスタッフや組織がどのように関与していくかはまだ流動的な段階にある,といった意見や,メタデータ作成ツールはまさに開発段階にある,ワークフローは再構築の過程にある,といった,メタデータ作成ワークフローの不確定性に言及するものが散見されたという。
報告書のワーキンググループでは,今回の結果を受けて,「MARCの利用は減少するか?」「検索エンジン,SRU/SRW,Flickr,YouTubeなどにメタデータを公開する図書館は増えるか?」「非MARCメタデータの日常的な維持管理は増えるか?」といった新しい論点を抽出しており,今後の調査研究に生かしていきたいとしている。
Ref:
http://www.oclc.org/programs/publications/reports/2009-04.pdf
http://hangingtogether.org/?p=604