E847 – IIPCのウェブストーミング・セッション開催される<会議報告>

カレントアウェアネス-E

No.137 2008.10.15

 

 E847

IIPCのウェブストーミング・セッション開催される<会議報告>

 

 国際インターネット保存コンソーシアム(IIPC;CA1664参照)のウェブストーミング・セッション(「ウェブストーミング」はブレーンストーミングからの造語)が,デンマークのオーフス州立・大学図書館を会場として,2008年9月16日から17日の2日間にわたり開催された。参加者数は,24機関41名(加盟候補1機関1名を含む)であり,国立国会図書館(NDL)からは筆者が参加した。

 会議1日目は,第1セッション「ソーシャルウェブの収集」と第2セッション「危機にあるウェブ情報とその依存関係を記録するための,年次書式の設計」(注)が同時並行で開催された。ソーシャルウェブはいわゆるWeb 2.0的(CA1624参照)なウェブサイトの総称である。

 筆者が参加した第1セッションには,フランス,アイスランド,韓国(2009年にIIPCに参加予定)等の国立図書館,及びInternet Archive等それ以外の機関から30名程度の参加があった。このセッションでは,IIPCの「収集(Harvesting)」ワーキンググループのリーダーであるInternet Archiveのモーア(Gordon Mohr)氏が司会進行をつとめた。参加者が各国のウェブアーカイブへの取組み状況につき情報交換やディスカッションを行い,「ストリーミング等動画の収集」「クローラトラップ及びスパムの回避」「JavaScriptで作成されたコンテンツ収集」「ID/パスワードで保護されたコンテンツの収集」等について,IIPCが開発した収集ロボットの機能拡張が必要と集約された。

 会議2日目は,第3セッション「WARC(CA1664参照)を活用する」と第4セッション「2015年利用者がウェブアーカイブで何ができるようになっているか,想像しよう」が同時並行で開催された。

 筆者が参加した第4セッションには,フランス,アイスランド,英国,米国,韓国等の国立図書館から20名程度の参加があった。このセッションでは,IIPCの「提供(Access)」ワーキンググループのリーダであり,IIPC議長であるアイスランド国立・大学図書館のハルグリムソン(Thorsteinn Hallgrimsson)氏が司会進行をつとめた。デンマーク,フランス,カナダの各国立図書館が法律に基づき収集したウェブアーカイブ(CA1614E606参照)の提供についてのプレゼンテーションやディスカッション等があり,「収集したコンテンツを欠落させることなく確実に提供すること」「Googleのような高度な全文検索を実現すること」「タクソノミーやソーシャルタギングを可能とすること」「非欧米言語のコンテンツも問題なく検索,提供できること」(NDL及び韓国国立中央図書館が主張)等が,近い将来ウェブアーカイブの提供に必要な機能として集約された。

 今回の会議の成果を,IIPCの今後のソフトやツールの開発等にどのように反映するかについては,2008年10月に英国・ロンドンで開催されるIIPC運営委員会が検討する。検討結果は,2009年5月にカナダ・オタワで開催されるIIPC総会で,IIPC議長が加盟機関に報告する予定である。

(国立国会図書館:柴田昌樹)

(注)具体的な内容は,ウェブアーカイブの長期利用保証のため,年次的に記録しておくべき情報(ファイルフォーマットのバージョン等)と管理方法(様式等)についての検討である。

Ref:
http://www.netpreserve.org/
CA1614
CA1624
CA1664
E606