カレントアウェアネス-E
No.100 2007.02.14
E606
カナダ,オンライン出版物を納本対象へ
近年,ネットワーク系電子出版物は増加の一途をたどっており,各国でこれを納本対象とするための法制度の整備が進んでいる(CA1612,CA1613,CA1614参照)。このような中,カナダ政府も法定納本制度を改正し,2007年1月1日より,出版社に対し,オンライン電子出版物をカナダ国立文書館・図書館(LAC)に納本することを義務づけた。
カナダの法定納本は,1953年,LACの前身であるカナダ国立図書館の時代に導入された。以降54年の間に徐々に対象を拡大し,1965年に逐次刊行物,1969件に録音テープ,そして1995年にパッケージ系電子出版物を追加するなど,メディアの多様化に対応してきた。オンライン出版物については,政府は2004年LACに対し,価値あるカナダのウェブサイトを保存するため選択的にウェブサイトを収集することを認めていた(E226参照)。今回の改正は,この延長線上にあるものである。
今回,納本の対象となったオンライン電子出版物は,タイトル,著者,出版日を特定できるものであり,これには,書籍,雑誌,年鑑,リサーチペーパー,学術雑誌などが含まれる。また掲示板,電子メール,個人サイト,イントラネット上の情報,動的データベース等については,LACが必要性を認める場合には,館長が出版者に対し自主的な納本を求めることができるとされている。
また,デジタル著作権管理(DRM)により,未来の世代がデジタル形式の出版物にアクセスできなくなってしまう問題についても解決を図っている。すなわち,納本の際に暗号の解除やアクセス制限機能の解除を行うよう義務付けられている。さらに,アクセスに必要となるソフトウェアやマニュアル,メタデータの提供も規定されている。
なお,納本される資料の扱いについては,出版社は,自身がオープンアクセスか限定的アクセス(LAC本館に設置されたコンピュータ端末でのみ閲覧することができる)を選択することができる。LACは,可能な限りオープンアクセスとすることを求めている。
国の知的財産を現在および将来の世代のために収集・保存し継承するという法定納本制度の目的は,導入以来変わっていない。その目的は,今日の情報環境においても達成されることが期待されるものであり,今回の法改正でカナダは確実にその歩を進めたと言えよう。
Ref:
http://www.collectionscanada.ca/6/25/index-e.html
http://www.cla.ca/caslis/CASLISOttawa_2007-01-16-e.pdf
http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/6287181.stm
http://www.collectioncanada.ca/electroniccollection/003008-1000-e.html
E226
CA1612
CA1613
CA1614