E605 – 国立図書館がオープンアクセス誌出版サービス開始(豪)

カレントアウェアネス-E

No.100 2007.02.14

 

 E605

国立図書館がオープンアクセス誌出版サービス開始(豪)

 

 オーストラリア国立図書館(NLA)が,学協会のオンラインジャーナル出版を支援するパイロットプロジェクトとして,オープンアクセス(OA)誌出版サービス“Open Publish”を開始した。現在までにオーストラリア文学研究協会(ASAL)の学会誌“Journal of the Association for the Study of Australian Literature”(JASAL)など4誌の提供を開始している。

 ASALとの協同は2005年10月からはじめられた。ASALは,これまでも学会誌の発行を行ってきたが,その発行部数は小さく読者が限られていた。またその出版モデルが持続可能ではないという問題を抱え,新しい出版の形態を模索していた。一方NLAも,国立図書館としてオーストラリアのOA誌をホスティングする役割の意義を認識していた。同館の目的は,「知識の収集,共有,記録,普及,保存の新しい方法を確立すること」であり,「新たなるオンラインコミュニティに参画し,急速に変化する世界において関係性を確実なものにしたい」と考えていた。両者は合意し,このプロジェクトを協同で進めることになった。

 その後両者は,システムの導入と持続可能な出版モデルの確立という課題に取り組んできた。システムには“Open Journal Systems” (OJS)という,査読付き電子ジャーナルの出版・管理を支援するソフトウェアを採用した。OJSは,カナダのブリティッシュ・コロンビア大学が進めている“Public Knowledge Project”で開発され,2002年からオープンソースソフトウェアとして無料配布されている。既に800誌以上のオンラインジャーナルに導入された実績を持つ。このシステム上で,OA誌としてJASALを刊行することにこぎつけ,新しい持続可能な出版モデルを示すことに成功したのである。

 事業の責任者であるグラハム(Bobby Graham)は,このパイロットプロジェクトの意義について,「NLAが,オンラインジャーナルの管理システムをホスティングすることに関する理解を深めたことだ」と述べている。実際,大学教授をはじめ様々な利用者から歓迎するコメントが寄せられている。

Ref:
http://www.nla.gov.au/nla/staffpaper/2006/documents/BGraham_Info-online-2007.pdf
http://www.nla.gov.au/openpublish/
http://www.nla.gov.au/openpublish/index.php/jasal
http://pkp.sfu.ca/?q=ojs