E1185 – 2011年IIPC総会及びワーキンググループ<報告>

カレントアウェアネス-E

No.195 2011.06.23

 

 E1185

2011年IIPC総会及びワーキンググループ<報告>

 

 国際インターネット保存コンソーシアム(IIPC)(CA1664参照)の総会及びワーキンググループ等関連会議が,オランダ王立図書館を会場として, IIPC非加盟機関も含めた約100人の参加者を集めて,2011年5月9日~13日に開催された。国立国会図書館(NDL)からは筆者が参加した。

 IIPC総会に先立ち,5月9日に「創造的にウェブアーカイブを構築し利用する(Out of the Box: Building and Using Web Archives)」と題したオープンセッションが行われた。各国のウェブアーカイブの構築に係る取組報告が行われ,「ウェブアーカイブの将来」(Web Archives: The Future(s))と称するレポートを作成中のオックスフォード大学のインターネット研究所(Oxford Internet Institute)の研究者からは,研究者にとって必要なウェブアーカイブは,研究者も収集対象の選択に加わり特定のトピックに限定して収集されたものである等の報告がなされた。

 5月10日から総会が始まり,IIPCの現況と2011年度の活動計画の他,ワーキンググループの進捗報告,新規にIIPCに加盟したアレキサンドリア図書館からのプレゼンテーション,オックスフォード大学のインターネット研究所とのディスカッション等がなされた。活動計画では,Facebook等のソーシャルメディアの収集や,スマートフォン,タブレット端末等のモバイル端末で発信されるコンテンツへの対応について検討を進めることが強調された。

 5月11日~12日は,IIPC加盟機関からいくつかの活動報告があった後,総会参加者は「収集」「保存」「提供」の各ワーキンググループに分かれて会議を行った。 NDLは活動報告として東日本大震災関連サイトの緊急収集,2009~2010年度に実施したウェブアーカイブの差分収集に関する調査結果,NDLが「提供」ワーキンググループの枠組みで実施しているIIPCの開発したウェブアーカイブ用全文検索エンジンNutchWAXの多言語対応の進捗状況と今後の展開について発表した。NutchWAXの多言語対応については,すでに日本語対応に成功し,簡体字中国語,韓国語も最終確認の段階である。本作業は2011年中に関連ドキュメントを整備し完了させる。IIPCはNutchWAXの全文検索モジュールをNutchから,開発コミュニティがより充実したSolrに移行することを計画している。NDLの成果はSolrに移行後の全文検索エンジンにも活用される。またNDLが参加する「提供」ワーキンググループでは,2012年開催のロンドンオリンピック関連サイトのIIPC加盟機関による共同収集プロジェクトについて6月末開始を目標とすること等が決まった。各ワーキンググループの終了を受けて全体会議となり,IIPCのプロジェクト役員のビーンズ(Aaron Binns)氏(Internet Archive)の総括をもって総会は閉会した。

 5月13日は,総会関連会議として,ウェブデータのマイニングと分析に係るワークショップが開催され,研究者が容易にIIPC加盟機関のウェブアーカイブを活用するためには,オープンソースのデータマイニングツールの開発が重要である旨等が主に技術的観点から検討された。

 次回IIPCワーキンググループはデジタル情報の保存に関する国際会議iPRESと合わせて日本で開催される予定であったが,東日本大震災の影響を受けてiPRES開催地がシンガポールに変更となったため,IIPCワーキングも2011年10月に英国のロンドンで開催されることとなった。2012年総会は米国のワシントンで開催される予定である。

(関西館・柴田昌樹)

Ref:
http://netpreserve.org/events/2011GA.php
http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=1830025
http://archive-access.sourceforge.net/projects/nutch/
CA1664
E847
E995
E1109