E1109 – 電子情報保存に関する国際会議(iPRES2010とIIPC)<報告>

カレントアウェアネス-E

No.181 2010.10.21

 

 E1109

電子情報保存に関する国際会議(iPRES2010とIIPC)<報告>

 

 2010年9月20日から22日の3日間にわたり,第7回電子情報保存に関する国際学術会議(7th International Conference on Preservation of Digital Objects:iPRES2010)がオーストリアのウィーン工科大学及びオーストリア国立図書館で開催された。今年の企画・運営は,前述の2機関及びオーストリアコンピュータ協会が共同で担当した。各国から電子情報の保存に関わる実務者及び研究者約290名が集まり,国立国会図書館(NDL)からは筆者を含め2名が参加した。

 本会議では,米国議会図書館が開始したTwitterの収集・保存の取組みや,ドイツのバイエルン州立図書館による長期的な保存に関する“BABS2”プロジェクト,Wikiのデータを保存するプロトタイプシステム“UROBE”,長期保存の観点からみたエミュレーション戦略に必要なプロセス及び課題等が報告された。また,ウェブサイトの長期保存と「地球に優しい」長期保存をテーマにそれぞれパネル・ディスカッションが行われた。その他,ポスター・セッションやライトニング・トーク等もあり,全体を通し,様々な調査研究及びプロジェクトの最新動向や先進的な取組みの事例等,今後の参考に資する多くの情報を得ることができた。

 あわせて,関連するテーマの講義やワークショップ等も行われた。また,夜には趣向を凝らしたソーシャルプログラムが連日催され,オーストリアワインのテイスティングや市庁舎での社交ダンス鑑賞,「世界一美しい図書館」として名高い国立図書館の見学等を通じて参加者間の親交がより深まった。

 また,国際インターネット保存コンソーシアム(International Internet Preservation Consortium:IIPC)のワーキンググループ会議もiPRES2010の終了後9月23日から24日にかけて開催され,ウェブサイトのコレクション構築方針やキュレータ(ここでは,アナログ形式の資料の収集や保存,廃棄等の管理を担当する職員)に対するウェブアーカイブに必要なスキルの研修方法等の事例報告や意見交換等がそれぞれ行われた。NDLからは現在取り組んでいる全文検索エンジンNutchWAX(CA1664E995参照)の多言語対応の進ちょく状況を担当者が報告した。また,2012年に開催されるロンドンオリンピック関連のウェブサイトの共同収集に関する議論も活発に行われた。

 なお,次回のiPRESは2011年11月1日から4日に,そしてIIPCの会議が同5日及び6日に,いずれも茨城県つくば市で開催される。

(関西館電子図書館課・柴田洋子)

Ref:
http://www.ifs.tuwien.ac.at/dp/ipres2010/
http://www.slis.tsukuba.ac.jp/ipres2011/
http://netpreserve.org/about/index.php
http://netpreserve.org/events/vienna.php
CA1664
E995