カレントアウェアネス-E
No.137 2008.10.15
E843
デジタル画像・写真のメタデータ標準に関するガイドライン<文献紹介>
JPEGやTIFFをはじめとするデジタル画像・写真フォーマットには,メタデータを格納するフィールドが設けられており,現在のところ,デジタルカメラで使用されている電子情報技術産業協会(JEITA)が規格化したメタデータ“Exif”規格,新聞社や通信社で使用されている国際新聞電気通信評議会(IPTC)が制定したメタデータ“IPTC-IIM”規格,アドビシステムズ(Adobe)社が策定した“XMP”規格などが使用されている。これら複数の規格によるメタデータは,メタデータグループごとに画像・写真ファイル内に格納することで,併存させることが可能であるが,各規格間の互換性は必ずしも保たれていない。そのためアプリケーションやデバイスごとに,各メタデータへの対応,非対応が分かれており,対応しないメタデータの表示,検索,記述の追加や削除が不可能であったり,場合によってはソフトウェアやハードウェアに対応しないメタデータが消去されてしまったりする,などの可能性がある。そのため,メタデータの互換性向上に向けた取り組みが求められていた。
これを背景に,画像データのメタデータ互換性に関する問題に取り組むコンソーシアム“Metadata Working Group(MWG)”が,2006年にアドビシステムズ社,アップル社,キャノン社,マイクロソフト社,ノキア社,ソニー社の,デジタルメディア産業6社により結成された。WMGは,(1)デジタル画像のメタデータの保存とシームレスな相互運用性,(2)すべてのアプリケーション,デバイス,サービスの相互運用性と利用可能性,の2つを目指して活動しているが,2008年9月24日,デジタル画像・写真のメタデータの取り 扱いに関するガイドラインを公開した。
このガイドラインは,画像・写真データを扱うプロセス(各デバイス,アプリケーションソフト,プラットフォーム,サービス),ファイルフォーマット,メタデータ標準規格のそれぞれで,保存・相互運用性を確保するとともに,各メタデータ標準と各メタデータ体系内部の重複を把握することを目的としている。具体的には,メタデータの作成者(Creator),変更者(Changer),利用者(Consumer)を定義するとともに,既存のメタデータ標準であるExif,IPTC-IIM,XMPの記述内容について再確認している。
その上で,利用者が画像・写真データを利用するにあたり核となるメタデータ要素として,キーワード,記述(Description),日付,説明(Orientation),重要度(Rating),著作権者表示,作成者,位置 (Location,GPS)の8項目を定義し, Exif,IPTC-IIM,XMPの各メタデータ標準において,上記8要素がどの程度取り上げられているかについて考察を加えている。
他方で,これら3つのメタデータをどのように標準化するのかについては,最新のXMPが,ExifおよびIPTC-IIMの大半の要素をカバーしていることから,XMPフォーマットへの変換と利用が容易であるとしている。これらを前提として,いつ,どこで,どのようにメタデータを変換するとよいのか,変換元となる各メタデータ・フォーマットと要素ごとにベスト・プラクティスを探るとともに,発生する課題にも言及している。
なおこのガイドラインは,新たなメタデータ構造や記録方法,記述標準の策定を目的とするものではないことが,明記されている。
Ref:
http://www.metadataworkinggroup.com/pdf/mwg_guidance.pdf
http://www.metadataworkinggroup.com/press/pdf/photokina_pr_2008_09_24.pdf
http://www.metadataworkinggroup.com/