E800 - 図書館による過去の大学新聞記事デジタル化で名誉毀損?(米国)

カレントアウェアネス-E

No.130 2008.06.25

 

 E800

図書館による過去の大学新聞記事デジタル化で名誉毀損?(米国)

 

 2007年秋,コーネル大学の卒業生で,今はカリフォルニア州で弁護士として働くある男性が,Googleで自分の名前を検索していたところ,ある情報がヒットした。それは,彼が関与したとされる窃盗事件に関する,コーネル大学の新聞“Cornell Chronicle”の記事だった。20年以上も前の1983年の記事であったが,コーネル大学図書館が過去の大学新聞をデジタル化し,デジタルアーカイブのコンテンツとしてウェブで公開していたため,Google検索の対象にもなっていたのである。

 男性はコーネル大学図書館に対し,Cornell Chronicleのオンライン版から,この記事に関する情報を削除するよう求めたが,図書館は拒否した。そこで彼は,Cornell Chronicleの記事は誤りであり,記事のデジタル化とウェブでの公開によって,名誉を毀損され,精神的苦痛を受けたとして,大学に対して100万ドルの賠償を求める訴訟を起こした。なおカリフォルニア州法は,名誉毀損の訴えに1年間の時効を設けているが,男性は,ウェブでの記事公開は再出版に相当し,再出版されてから1年未満の提訴であることから,時効は適用されないと主張した。

 この訴えに対し大学側は,根拠のない告訴から言論の自由と出版の自由を保護するカリフォルニア州法“anti-SLAPP”法に基づき,男性の訴えを棄却するよう求めていた。

 南カリフォルニア地区連邦地方裁判所は2008年6月,大学側の主張を認め,Cornell Chronicleの記事は真実を伝えており,名誉毀損の訴えの対象になりようがないこと,また記事の内容は公共の利益に関するものであるため,プライバシーの侵害には当たらないとして,男性の訴えを退ける判決を下した。

 ケニー(Anne Kenney)コーネル大学図書館長は裁判所の判決を,図書館にとっての真の勝利であるとし,また,インターネットでアクセス可能とする情報の中には,人を困惑させる可能性のある資料が含まれるおそれがあるが,それが公的な記録をゆがめる理由にはならない,という見解を示している。コーネル大学のデジタル化プロジェクトのリーダーなどを務めるハートル(Peter Hirtle)氏は,言論の自由の促進,情報の一般公開という図書館の重要な役割が認められた本判決を支持しながらも,デジタル化情報のウェブでの公開が再出版に当たるかどうかという論点を裁判所が扱わなかったことに対し,「何かをスキャニングする度に,最初の出版者と同じ編集責任を負わなければいけないとしたら,悲惨なことになる」として,懸念を示している。

Ref:
http://ecommons.library.cornell.edu/index.jsp
http://communications.library.cornell.edu/com/news/PressReleases/Libel-lawsuit-against-Cornell-University-Library-digitization-project-dismissed.cfm
http://cornellsun.com/section/news/content/2008/06/15/judge-dismisses-alums-libel-suit-against-university
http://www.news.cornell.edu/stories/June08/VanGsuit.ws.html
http://www.ala.org/ala/alonline/currentnews/newsarchive/2008/june2008/Cornellwinslibelsuit.cfm
http://www.libraryjournal.com/info/CA6567757.html
http://cornellsun.com/node/26579
http://www.libraryjournal.com/article/CA6525994.html