カレントアウェアネス-E
No.125 2008.03.26
E769
オープンリールテープデジタル化のための手引き
欧州連合(EU)の“Culture 2000”プログラムの支援のもと,視聴覚資料保存のための教育活動を行っている「TAPE(Training for Audiovisual Preservation in Europe:欧州における視聴覚資料保存のための研修)」が,オープンリールテープのデジタル化の手順を示した作業手引きを作成,ウェブサイトで刊行した。この手引きはオープンリールテープに限らず,カセットテープのデジタル化においても多くの点で適用できるとのことである。
手引きは,アナログ録音資料のデジタル化の経験が浅い担当者に対し,作業を3つのステップに分けて解説している。
最初のステップは,対象となる資料の準備作業について述べている。資料の破損・劣化状態を確認し,デジタル化に耐えうる状態であるかを調べる方法や,状態に応じた資料の補修方法が紹介されている。次のステップは,アナログ録音資料を再生する機器の準備・設定作業について説明している。機器を選択する際のポイントやメンテナンスの方法に続き,再生を最適化するために必要な機器の設定方法が詳述されている。資料と再生機器の準備が整ったところで,最後のステップとして,実際のデジタル変換作業に入る。得られるデジタルデータを,アナログ音源の再生結果に可能な限り近づけるための技術的な手法に加え,出来上がったデータの整理や保存・複製の際の留意点についても解説がなされている。
それぞれの作業の説明には「なぜ(why)」その作業が必要で,また実際は「どのように(how)」作業を行えばよいのかが,多くの写真や図表を交えつつ,分かりやすく書かれている。また補足として,この手引きでは触れられなかった,より詳細な説明のある参考資料へのリンクも多数掲載されている。
アナログ録音資料の保存についての認識が高まる中,この手引きはアナログ録音資料のデジタル化における基礎的な作業フローを知るために,有用な資料になると思われる。
Ref:
http://www.tape-online.net/
http://www.jazzpoparkisto.net/audio/
CA1644