E767 – 図書館職員の職業満足度は?(米国)

カレントアウェアネス-E

No.125 2008.03.26

 

 E767

図書館職員の職業満足度は?(米国)

 

 米国のLibrary Journal誌は2007年2月,1994年以来13年ぶりに図書館で働く人々の職業満足度調査を実施し,その結果を公表した。また結果の分析を2007年10月,2008年2月,2008年3月の3回に渡り連載している。

 今回の調査では,公共図書館から1,180名,学術図書館から1,213名,専門図書館から413名,学校図書館から213名が回答した。回答者のうち,現在の自分の職業に「とても満足」,「満足」と答えた人は,館種に関係なく,また30歳以下,30歳から49歳,50歳以上という3つの年齢区分に関係なく高い数値を記録し,全体では約70%を占めた。さらに全体の9割近い人が,もう一度やり直すとしても,図書館で働くことを選択すると答えたという。今回の結果は1994年の調査結果とほぼ同様の内容であり,「図書館職員は職業満足度が高い」ことが大きな特徴となっている。

 高い満足度の一方で,「不満」だとされている項目には主に,「賃金の低さ」,「官僚的組織の弊害」,「改革や創造性を拒むような図書館経営のあり方」,「資金難」といったことがある。例えば賃金の低さということについて,ある回答者(30歳以下)は「私は児童室担当の唯一のフルタイムの司書であり,児童室のすべてに責任を負っているにもかかわらず,賃金はこれらの責任を反映したものにはなっておらず,パートタイムの司書研修生として働き始めたときと同じ賃金で働いている。」と答え, 40歳を超えているある回答者は「私はMLS(図書館学修士号)を持っていないが,MLSを持っているスタッフを少なくとも6人トレーニングしなければならない。彼らのほとんどは,初任給が私より高額である。彼らには図書館での勤務経験がないというのに。」と答えた。そのほか,地方の小規模図書館で働く人からは,地方の図書館員は,選書,目録業務,プログラミングなどあらゆる図書館業務をこなしているにもかかわらず,大規模図書館の職員から事務員のような扱いをうけ,また昇進の機会が限られている,という指摘があった。

 しかし,こうした不満は職業満足度の高さと共存しているという。図書館を頼りにしてくれている利用者を支援することがもたらす満足感が,この複雑な状況を生む大きな要因となっている。

 今回の調査から明らかになったことは決して目新しいものではないものの,図書館が抱える問題点を明確に示しており,今後の図書館員教育や図書館経営を考えるヒントとなりうるだろう。例えばLibrary Journal誌の記事は,図書館職員にはより高いレベルの管理能力と継続教育の機会が必要であること,デジタル環境に対応した図書館へ変容するためには十分な数の若い技術者が必要となることを指摘するとともに,これらを実現できるかどうかは,図書館の指導者層が従来以上に効果的に,図書館と図書館の価値を明確に表明していくことができるかどうかにかかっている,と指摘している。

Ref:
http://www.libraryjournal.com/contents/pdf/satisfaction.pdf
http://www.libraryjournal.com/article/CA6483878.html
http://www.libraryjournal.com/article/CA6523442.html
http://www.libraryjournal.com/article/CA6533042.html