E766 – 中教審,生涯学習の振興に係る答申を提出

カレントアウェアネス-E

No.125 2008.03.26

 

 E766

中教審,生涯学習の振興に係る答申を提出

 

 文部科学省が設置している中央教育審議会(中教審)は2008年2月19日,答申『新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について~知の循環型社会の構築を目指して~』を文部科学大臣に提出した。これは2005年6月に文部科学大臣から受けた諮問に基づき,国民の学習活動の促進や地域社会における子どもの育ちの環境改善等のための生涯学習の振興方策について,2006年12月に改正された教育基本法を踏まえて中教審生涯学習分科会が審議し,その提言をまとめたものである。

 本答申は,生涯学習の振興に係る現状を整理し,今後の目指すべき方向性とその具体的な方策,留意点について述べた第1部「今後の生涯学習の振興方策」と,特に行政担当者向けに,これまでの振興方策とその課題を整理し,生涯学習振興行政の在り方・考え方・見直すべき事項を提言した第2部「施策を推進するに当たっての行政の在り方」からなる。各個人の学習成果を社会に還元することが社会全体の持続的な教育力向上を果たし,またそのような社会への参画・貢献から個人は新たな学習へのインセンティブを得る,という「知の循環型社会」の構築が必要であるという認識のもと,これを実現するための生涯学習振興行政・社会教育行政の在り方について,制度の在り方も含めて検討されている。

 とりわけ図書館については,地域の「知の拠点」であり,「国民が生涯にわたって自主的な学習を行う上で,その果たすべき役割は極めて大きい」として,一層の活性化,機能の充実を提案している。具体的には,レファレンスサービスの充実と利用の促進,課題解決に必要な資料・情報の提供,ホームページからの横断検索を充実させることによる「地域のポータルサイト」化,学校図書館への支援等が重要だとしている。また従来の資料収集・整理・保存・提供による住民の個人的な学習支援という役割に加え,地域の課題解決を支援すべく,地域の実情に応じた情報提供サービスを行う役割,学習機会を提供する役割が求められているとして,図書館未設置の市町村に対し,図書館の整備に向けた取組に速やかに着手するよう求めている。このほか,運営状況に関する自己評価と,それに基づいて改善を図る努力義務及び地域住民等の関係者に対し情報提供を行う努力義務を課すことも求めている。

 また生涯学習・社会教育の推進を支える人材としての司書及び司書補については,時代の要請に応じ,住民の学習ニーズに適切に対応できる能力を養うため,司書の資格要件として大学において履修すべき図書館に関する科目について法令上明確に定めること,司書補の資格要件を緩和すること,任命権者のほか文部科学大臣及び都道府県が司書及び司書補の研修を行うよう努める旨の規定を新たに法令上設けること等が提言されている。なお,司書講習及び大学における司書養成課程等において履修すべき科目,単位についての具体的な見直しについては、今後引き続き検討する必要があるとされている。

Ref:
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/080219-01.pdf
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/080219-02.pdf
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