カレントアウェアネス-E
No.118 2007.11.28
E721
子どもたちの読書の実態は?
毎日新聞社はこのほど,第53回学校読書調査の結果をまとめ,発表した。調査が行われたのは2007年6月で,統計学的な配慮をして抽出された全国の小学生39校3,519人,中学生41校3,866人,高校生37校3,946人,計117校1万1,331人が調査に協力した。
今回の調査から,以下のような点が明らかになった。
- 2007年5月に本を1冊も読まなかった生徒の割合は,小学生5%,中学生15%,高校生48%で,小中学生では過去最低,高校生も5割を割る低い数値となった。
- 1か月の平均読書冊数は,小学生9.4冊,中学生3.4冊,高校生1.6冊で,小学生は過去2番目の多さを記録,中高生は過去最多を記録した。
- 小学生から高校生の男子生徒に最も人気が高かった小説は,あさのあつこ著の野球小説『バッテリー』であった。
- 中高生の女子の間に「ケータイ小説」が浸透し,中高生女子によく読まれた小説の上位は「ケータイ小説」が占めている。
- 全校一斉読書の時間があると答えた生徒は,小学生で93%,中学生で87%だったが,高校生では43%にとどまった。なお一斉読書は概ね好意的に受け入れられている。
- 一斉読書の有無にかかわらず,一斉読書の時間をより良くするため効果があると思うものを,7つの選択肢から3つ選ぶという設問では,(1)学校図 書館に魅力的な本をそろえる,(2)学級文庫に魅力的な本をそろえる,(3)友達同士で本を勧め合う,いう結果となり,この結果は小中高で共通している。
今回の学校読書調査は,生徒の読書量の増加,読書をしない生徒の割合の低下など,全国学校図書館協議会が評価したように,もはや「本離れ」とはいえない結果となっている。文部科学省等が中心となって取り組んできた「子どもの読書活動推進」(CA1638参照)が一定の成果を見せているという見方ができるかもしれない。
また,子ども向け教材開発等を手がけるベネッセはこのほど,小中高の生徒の保護者約500人に対して実施した家庭での読書活動,読書推進についてのアンケート調査(調査期間:2007年9月18日から9月20日)の結果を発表した。それによると,回答した保護者の9割以上が読書に対し,肯定的な評価をしていることが分かった。一方で読書量が年齢を重ねるにつれ,減少するという傾向がみられた。家庭で子どもの読書推進のために行っていることをランキングにまとめると,(1)図書館に連れて行く,(2)本のことについて話をする,(3)本を買い与える,という結果になったという。
今回の一連の調査結果を見ると,子どもに読書の楽しみを伝える機関として,図書館への期待は小さくない。図書館は今後,調査結果から分かった「ケータイ小説」の人気に見られるような読む媒体の多様化や,年齢とともに減る読書量といった傾向に留意点とヒントを見出しながら,時代の動向に配慮したサービスを考案・提供していく必要があるのではないだろうか。
Ref:
http://mainichi.jp/enta/book/news/20071027ddm010040175000c.html
http://mainichi.jp/enta/book/news/20071027ddm010040174000c.html
http://mainichi.jp/enta/book/news/20071027ddm010040173000c.html
http://benesse.jp/blog/20071031/p1.html
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/dokusyo/index.htm
CA1638