E699 – 地方の小さな図書館の「利用者向けコンピュータ事業」の支援策

カレントアウェアネス-E

No.114 2007.09.26

 

 E699

地方の小さな図書館の「利用者向けコンピュータ事業」の支援策

 

 OCLCが運営している図書館職員向けオンライン学習コミュニティ“WebJunction”(E557E644参照)は2005年から,ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の助成を受け,米国内の州立図書館と協同で「地方の図書館の持続可能性(Rural Library Sustainability:RLS)プロジェクト」と題する地方の小さな図書館のスタッフ向けのワークショップを各地で開催している。2007年6月,このワークショップの内容をオンラインで無料で受講できるコースをWebJunctionが開発し,プロジェクトを進展させている。

 RLSは,地方の小さな図書館に特有の課題,とりわけ利用者向けのコンピュータ事業(E692参照)を運営・維持管理していくことについて,有益な情報,リソースを提供し持続可能性戦略を構築できるようにするとともに,フォーラムを開催して参加者同士が情報を共有したり交流したりできるようにするというプロジェクトである。

 このうち,利用者向けのコンピュータ事業を持続可能なものとして運営していくための戦略としては,

  • (1)同じような課題に直面している他の図書館とつながりを持つ
  • (2)技術的サポートを受けられるようにする
  • (3)アップグレードとメンテナンスの計画を立てる
  • (4)図書館職員と利用者のトレーニングの機会を拡大する
  • (5)十分な資金を調達する
  • (6)コミュニティのニーズを満たし,サービスを宣伝するための戦略を開拓する
    (7)図書館と図書館サービスの価値を政策決定者に示すアドヴォカシー活動を行う

の7つが不可欠であるとして,各々の領域でアクションプランを開発・遂行していけるよう,ワークショップやオンラインで講習が行われている。

 またワークショップの参加者は,参加後にWebJunctionのウェブサイトで教材や他の図書館の優良事例を参照したり,他の参加者と意見交換を行うよう推奨されている。WebJunctionは,ウェブ上にこのような場所を提供することで,参加者の間に継続的なつながり・ネットワークを作り,孤独感を減らすことを企図しているという。さらに,州立図書館側でも,独自にブログや参加者用メーリングリストを作ってWebJunctionの新着情報を通知したり,1か月に1回,ウェブ上で情報共有・討議プログラムを開催したりしている,カンザス州立図書館のような例もある。

 2007年9月12日に米国図書館協会(ALA)とフロリダ州立大学が公表した,2006/2007年度の公共図書館における利用者向けコンピュータ事業に関する調査報告“Libraries Connect Communities: Public Library Funding & Technology Access Study”では,73%の図書館が,コミュニティで唯一の,無料で利用者向けコンピュータを提供している場所であるという。地方の小さな図書館が,引き続きコミュニティの情報拠点であり続けるための活動に,WebJunctionは力を注いでいる。

Ref:
http://webjunction.org/rural
http://data.webjunction.org/wj/documents/11147.pdf
http://webjunction.org/do/DisplayContent?id=11132
http://webjunction.org/do/DisplayContent?id=16846
http://webjunction.org/do/DisplayContent?id=17662
http://www.ala.org/ala/ors/publiclibraryfundingtechnologyaccessstudy/finalreport.pdf
E557
E644
E692