E644 – 図書館職員研修のブレンディド・ラーニングの進展状況

カレントアウェアネス-E

No.106 2007.05.16

 

 E644

図書館職員研修のブレンディド・ラーニングの進展状況

 

 図書館職員向けオンライン学習コミュニティの開発・運営を手がけるWebJunctionが,ブレンディド・ラーニング(blended learning)の枠組みを整理する報告書を公開した。

 米国では図書館員の研修として,e-ラーニングがトレンドになっている。WebJunctionでは,2006年に,この状況を確認するとともに,未だ利用者のニーズとのずれがあるなどの課題を明らかにし(E557参照),同時にコンテンツの充実を進めている。この報告書は,対面式も含むあらゆる形態の研修をどのようにブレンド(混和)すればより高い研修効果が得られるかを総合的に検討するため,技術の進化とともに多様化したe-ラーニングの状況を整理するものとなっている。

 具体的には,e-ラーニングを含む多様な研修方式を,対面式,同期型バーチャル協同式,非同期型バーチャル協同式,非同期型マイペース式の4つのカテゴリーにわけている。そして特に注目される電子掲示板,インスタントメッセージ(チャット),ポッドキャスティング,e-ラーニングソフトウェア・ツール,ウェブ・コンフェレンスの5つについて,それぞれ2ページ程度で特徴や利用可能なソフトウェアを紹介している。

 また併せて,ブレンディド・ラーニングの事例として以下の7つの研修の紹介されている。

  1. LibraryU
     イリノイ州の図書館員を対象としたウェブベースの研修の事例。
  2. アイオワ州立図書館
     対面式とテレビ会議システムなどを組み合わせた研修の事例。
  3. メリーランド州の図書館開発・サービス部
     オンラインコースと月次の対面式研修を組み合わせ,経費節減と高い研修修了率を実現している事例。
  4. Learning2.0
     シャーロット・メクレンバーグ郡公共図書館の,図書館員が無料で利用できる新しい技術に習熟するための研修の事例。
  5. LE@D
     ノース・テキサス大学の,オンライン継続教育コースLE@D(Library Education @ Desktop)の事例。
  6. ワシントン州VRP
     ワシントン州がVRP(Vitual Reference Project)として開発・提供している,バーチャルレファレンスサービスの遂行に必要な技術とスキルを学ぶための研修の事例。
  7. スペイン語アウトリーチ・プログラム
     図書館員のスペイン語研修のオンラインコミュニティを発展させているWebJunction研修の事例。

 新しいツールとブレンディド・ラーニングの考え方により,今まで不可能だった革新的な研修モデルが成果を挙げつつあることが端的に見て取れる。新しい研修モデルは今後も登場するものと思われるが,WebJunctionでは,引き続き新しい実践事例の情報収集と共有に努めるとし,情報提供を求めている。

Ref:
http://www.oclc.org/news/releases/200661.htm
http://data.webjunction.org/wj/documents/13893.pdf
http://webjunction.org/blendedlearning
http://techessence.info/node/88
http://learning.libraryu.org/home/
http://www.librarybytes.com/2006/11/nine-seven-best-practices-on-learning.html
http://web2.unt.edu/cmp_lead/
E557