カレントアウェアネス-E
No.114 2007.09.26
E700
公立図書館で働く司書有資格者のいま
文部科学省はこのほど,公立図書館に勤務する司書有資格者の勤務実態や,司書・図書館職員の研修事例を収集・分析し,司書に求められる資質を育成するために望ましい研修や司書資格制度のあり方についてまとめた報告書『図書館職員の資格取得及び研修に関する調査研究報告書』を公表した。この報告書は,全5章で構成されており,巻末には参考資料として実際の調査で使用した各種アンケートフォームがついている。
第1章では調査の概要が簡潔にまとめられ,第2章以降が実態調査の報告となっている。第2章では公立図書館の運営形態や事業内容,図書館関連法制の動向,司書資格制度の現状等について,国や日本図書館協会(JLA)がこれまでにまとめた資料を収集・整理し,分析している。第3章では,公立図書館で働く司書有資格者を対象にしたアンケートの実施結果をまとめており,勤務形態,司書資格の取得経緯,業務内容の実態が分かる。また,司書資格が今の仕事に役立っていると思う点・役立っていないと思う点,今後の研修に望む科目等について現場の職員の意見が整理されている。第4章では公立図書館の設置主体である都道府県・市区町村の教育委員会に対し実施したアンケートをもとに,図書館の運営方針,人員配置方針,職員の資質向上に向けた行政の取り組み等について実態が報告されている。第5章では,都道府県・市区町村の教育委員会,都道府県立図書館,都道府県図書館協会,関連団体等に対して行ったアンケート調査の結果をもとに,全国で実施されている図書館職員・司書向けの研修事例を収集・分析している。特に先進的な研修事例についてはヒアリング調査も行い,研修の概要やプログラム,ねらい等を各研修事例ごとに整理している。これらの結果をもとに,今後の研修実施に向けての課題や工夫の凝らし方をまとめている。
文部科学省が設置している「これからの図書館の在り方検討協力者会議」(CA1621参照)では、2006年度は「時代の要請に応え得る司書の育成」をテーマに議論が交わされてきた。今回の報告書はこの議論を踏まえ,実際に研修や司書課程カリキュラムを見直すための基礎資料として作成されたものである。今後これをもとにして,どのように司書課程カリキュラムの再編等が具体化していくか,引き続き注目していく必要があるだろう。
Ref:
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/houkoku/07090599.htm
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/index.htm
CA1621