E685 – “DAISY for All Project”でDAISYをアジア・太平洋地域に

カレントアウェアネス-E

No.112 2007.08.29

 

 E685

“DAISY for All Project”でDAISYをアジア・太平洋地域に

 

 DAISY(Digital Accessible Information SYstem)は,視覚障害者や普通の印刷物を読むことが困難な人々のためのデジタル録音図書の国際標準規格として普及しているが,DAISYコンソーシアムは日本財団からの助成のもと,この普及の範囲をアジア・太平洋地域の発展途上国にまで広げようという“DAISY for All Project”に2003年から5か年計画で取り組んでいる。

 DAISY for All Projectの主な活動は以下の4つである。

  • 拠点となるフォーカルポイント(focal point)の設立。(2003年度にタイ・インドに地域センターを設立したことから始まり,2006年度までに8か国にフォーカルポイントを設立した。2007年度はカンボジア・ラオス・モンゴルに設立する予定。)
  • DAISYの技術を教える人材を育成する国際的な研修の開催(年1回,タイのバンコクにて実施。)
  • オープンソースソフトウェアの開発
  • プロジェクトを広めるマーケティング活動

 中でもオープンソースソフトウェア開発には特に力を入れており,DAISY開発ツール“SDK”や,録音図書再生用ソフトウェア“AMIS”等の開発に積極的に関わり,DAISYコンソーシアムのツール開発プロジェクトに貢献している。また,プロジェクトを持続可能なものとしていくためのマーケティング活動として,2003年と2005年の2度に渡って実施されたWSIS(国連世界情報社会サミット;E159E410 参照)に関係者を派遣し,障害者に配慮したICTの開発を訴えた。その結果,ユニバーサルデザインの概念や障害者に配慮した支援技術の開発に関する文言が,サミットの公式文書に組み込まれることになった。その他にも国連が実施しているイベントに積極的に参加するなど,プロジェクトへの理解と協力を呼びかけている。

 DAISYについてはこれまでも,国による資料・再生機器の整備の差といったデジタルデバイドの問題が指摘されていた(CA1611参照)。DAISY for All Projectにより,アジア・太平洋地域でDAISY製作に取り組む国が着実に増え,障害を持つ人にとってのICTの重要性が訴えられていることは,デジタルデバイド解消に向けての重要な一歩と言えよう。

Ref:
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/daisy/dfa.html
http://www.daisy-for-all.org/
CA1611
E159
E410