E659 – REFORM から REFORM2 へ:日本の大学図書館の将来は?

カレントアウェアネス-E

No.108 2007.06.13

 

 E659

REFORM から REFORM2 へ:日本の大学図書館の将来は?

 

 土屋俊・千葉大学教授を代表とする研究グループにより,2004〜2006年度の3か年にわたり進められてきた研究プロジェクト“REFORM”(電子情報環境下における大学図書館機能の再検討;E558 参照)の報告書がこのほど公開された。

 “REFORM”は,メディア情報通信技術の進歩など,大学図書館を取り巻く環境の変化を,大学図書館機能に変革をもたらすものであるとの前提に立つ。その上で,電子化された学術情報システムにおける大学図書館機能の概念的検討,国際比較を含めた大学図書館機能の実態の解明,学術情報のマネジメント・サービス・発信の観点からの大学図書館将来像の具体的提案,の3点を目的に研究を進めてきた。その結果,大学図書館に関する政策動向,図書館支援体制,学術情報の電子化と大学図書館の関係について,(1)1970年代以降の,日本の大学図書館の政策動向とその成果,(2)1980年代以降整備された「学術情報システム」の成果と,NACSIS-ILLを中心とした現状分析,(3)2000年以降顕著になった,学術情報の電子的生産・流通体制の変貌と大学図書館に対する影響,の3点を明らかにした。

 これらの研究成果をもとに“REFORM”研究チームが行った提言は,大学図書館の実務と研究の双方に及んでいる。実務について,以下の4点を指摘している。

  • 大学図書館の現状把握のためのデータ収集の必要性
  • 大学図書館自身による実証的な大学図書館研究の必要性
  • 高等教育における大学図書館機能の明確化
  • 国内文献の電子的流通の推進

また大学図書館研究について,以下の2点を提言している。

  • 大学図書館本来の利用者である研究者・学生の利用研究の必要性
  • 科学技術政策,高等教育政策,出版流通などを含んだ総合的な研究アプローチ

 この研究は“REFORM2”(電子情報環境下において大学の教育研究を革新する大学図書館機能の研究)として,2007年度からさらに3か年,継続されることになっており,「2016年の大学図書館像」を描き出すべく,活動を強化しつつある。大学図書館が大学外からの学術情報のゲートウェイだけではなく,大学内で生産される情報の発信・普及機能を担う組織に変革することが求められている現在,“REFORM2”がどのような提案をするか,大いに注目される。

Ref:
http://cogsci.l.chiba-u.ac.jp/REFORM/Final_Report/reform_final_report.html
http://cogsci.l.chiba-u.ac.jp/REFORM/
E558