E633 – これからの学術・研究図書館の役割はどうあるべきか?

カレントアウェアネス-E

No.104 2007.04.11

 

 E633

これからの学術・研究図書館の役割はどうあるべきか?

 

 学術情報流通の変化に伴い,図書館の役割も,物理的資料の収集から,あらゆる情報の組織化,保存および提供へと広がっている。またウェブによる情報提供の進展は,これまでの学術・研究図書館が担っていた,情報の独占的な提供主体という地位を脅かしつづけている。

 このような状況の中で,今後学術・研究図書館はどのように変革し,どのような役割を果たしていくべきか。米国大学・研究図書館協会(ACRL)は2006年11月,研究者,大学の学長,図書館団体関係者,出版社やベンダーなどから29名を招聘し,「技術や教育,学習,研究環境の変化に対し,学術図書館の役割,責任,資源を今後10年間,どのように再配分するか」をテーマに,円卓会議を開催した。そしてこの議論の結果を,エッセイ「学術図書館における技術と変化」にまとめ,2007年2月13日に公開した。

 「学術図書館における技術と変化」は,学術・研究図書館自身の変革,図書館や図書館員の役割の再構成,それらに向けたACRLの役割,の3本柱で構成されている。

 まず,「1.図書館が引き続き研究機関内で重要な位置を占めるために必要な変革」では,研究機関の図書館が今後数年間で取り組むべき活動として,

  • 図書以外のさまざまな情報も入手できる場としての図書館の認知
  • 図書館の資源以外の情報も用いた,利用者の情報入手・活用の支援
  • 研究機関内で図書館が進化していることの,さらなる積極的なアピール

を挙げている。

 次に,「2.研究機関における図書館や図書館員の役割の再構成」では,研究機関の図書館や図書館員が果たしていくべき役割について,再定義を促している。具体的には,

  • 図書館が提供している研究資源の目録の充実
  • 研究機関内での新たな学術コミュニティ活動形成の支援
  • 研究機関が保有する知的資源の管理・運営支援
  • 研究機関の戦略目標達成に向けた,積極的な支援

の4点である。

 最後に,「3.今後,ACRLが果たすべき役割」では,1や2を実現してゆくためのACRLの役割として,

  • 高等教育・研究機関の役割を支える図書館像について,関連機関のリーダーとの対話を進める
  • 高等教育機関における学習活動の成功に関する理解を深めるために,国家的取り組みへの支援と貢献を図る
  • 図書館や情報環境の変化を計るための指標を定義し,測定する
  • 研究機関のニーズの変化に対する図書館の貢献度を測定する基準を制定する
  • 技術の効果的な利用による教育・研究活動の実現に向けて,図書館や図書館員への支援を行う
  • 新たなパラダイムの普及や研究機関や利用者の意識の変化を満たすことができる,図書館の潜在性と実践について,全米に率先して伝達する

といった活動を展開していくことを提言している。

 ACRLは2007年3月15日付けで,ブログ“ACRLog”にこのエッセイを取り上げ,コメントを募集している。

Ref:
http://www.ala.org/ala/acrl/acrlissues/future/changingroles.htm
http://acrlblog.org/2007/03/15/acrl-summit-report-on-changing-role-of-academic-libraries-now-available/
http://www.ala.org/ala/pressreleases2007/march2007/ACRLessaytechnology.htm